「免疫療法は、特異性と記憶が特徴です。はしかなどの感染症では、ワクチンを打って免疫細胞に記憶ができると発症することはありません。がんワクチンも、免疫細胞に一度記憶ができて効果が見られたら、長期的に持続することができます。ただし、効果がある人とない人がいるので、効く人を選ぶ、あるいは効く人を増やすことが今後の課題です」(笹田センター長)
がんワクチンセンターでは、がん細胞が遺伝子変異により発生することに着目し、遺伝子変異由来の抗原の研究を行ない、新たなペプチドワクチンを開発している。
例えば、肺がんの分子標的薬のイレッサやタルセバは、がん細胞の増殖にかかわる因子(EGFR)の働きを阻害する薬として開発され、投与当初は非常に効果があった。
ところが平均1~2年で耐性ができてしまう。これは、がん細胞に遺伝子変異が起こり、効かなくなるためと考えられている。そこで新しいペプチドワクチンを使うことで、こうした変異に対する免疫細胞を活性化し、がん細胞を攻撃できる可能性も研究中だ。
今後の成果に期待したい。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年7月1日号