スマートフォンの普及によって国内外で社会問題化している「スマホ依存症」。SNS依存や子供のゲーム依存などさまざまな影響が出ている中、新たに問題視されているのが、親がスマホに夢中になるあまり子供を無視してしまう「スマホネグレクト」だ。そのスマホネグレクトが子供だけでなく、ひいては社会に与える影響について危惧する医療関係者は多い。なぜ危険なのか、『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』(朝日新書)の著者で、精神医学を専門とする医学博士の岡田尊司さんに聞いた。
今、国際的にインターネットゲーム障害の診断基準が正式に作られてきている中、日本においては、依存の中心は「スマホ依存」になってきており、その拡大と共に、スマホネグレクトも急増しているという。スマホネグレクトは、それ自体だけではなく、親に育児放棄の意識がないことも問題となっている。
「以前もパチンコ依存など、熱中しすぎて子供の世話をせず死なせてしまう事件が起きていましたが、スマホ依存の場合は少し違う部分もあって、全く世話をしないというよりも、いつの間にかスマホに気を取られて、子供に関心が行き届かなくなるのです。
よくあるのは、授乳時にも赤ちゃんではなくスマホを見ているとか、子供の話しかけに、スマホに気を取られて上の空で返事をしているなどです。自身は育児放棄をしたつもりはないだけに自覚しにくく、誰でもいつの間にか軽度のネグレクトをしてしまい得る。それが大きな問題にも繋がりかねないのです」(岡田さん、以下「」内同)
子供が幼いときは特に、目を見て、気持ちを込めて応答することが愛着形成には非常に重要であり、それがないと、子供の応答性は非常に乏しくなって愛着が築かれにくく、軽度の愛着障害が生じてしまうと岡田さんは説く。
「“ちょっとぐらいスマホに気を取られたって”と思いがちですが、愛着障害が起きると、社会性や共感性の発達に問題が起きたり、安心感が乏しくなったり、知能の発達にも影響しかねません。多動や情緒不安定、注意力欠如のほかに、対人関係の問題も起きます。親子関係も不安定になったり希薄になりますから、将来新たな問題にも繋がります。
お母さんの愛着が不安定だと、子供も依存しやすくなるとも言われているので、同じようにインターネットやスマートフォンにも依存しやすいと思われます」
実際、ネグレクトによる影響として、関心を共有しにくい、目を合わせない、おっぱいの吸いが悪いなど、子供にさまざまな異変が見られていることが小児科医によって指摘されている。スマホネグレクトによるものだけなのか判断は難しいが、危機感を持つ医療関係者は増えている状況だ。