芸能

佐藤浩市 デビュー作で共演した若山富三郎の厳しい教え

映画『64─ロクヨン─』では主演を務める佐藤浩市

 公開中の映画『64─ロクヨン─』では、ベテランとして若手俳優たちと向かい合っている役者の佐藤浩市のデビューは19歳、NHKのドラマだった。映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』から、役者デビューとメジャー映画デビュー。このふたつの作品で共演した若山富三郎との思い出について語った佐藤の言葉をお届けする。

 * * *
 佐藤浩市は1980年、19歳の時に父・三國連太郎と同じ役者の道に進むことになる。

「子供の頃から根底に出役というのがあったとしても、口にしなかった。できなかった。というのは、近所の方だろうが小学校の同級生の親御さんであろうが、みんな『どうせ役者さんになるんでしょう』って。そう言われることへの反発があったわけです。

 ただ、映画は好きだったので何らかの形で携わりたいという気持ちはありました。それで映画の学校に通って、フィルムの編集の勉強をしました。その夏休みくらいにたまたまNHKで背格好とか歳がそれくらいの役者を探していると言われて、話のタネというか。出役側というのは三國を見て知ってはいますけど、自身としてもどういうものか経験してみたいという想いもありましたし」

 デビュー作は同年のNHKドラマ『続・続 事件 月の景色』。若山富三郎扮する老弁護士と対峙する犯罪者の役を演じた。

「演技はずぶの素人でしたが、現場に入る前に一ヶ月半くらいNHKに通って、毎日必ず誰かがついてくれて稽古をしてくれるわけですよ。当時は演技のいろはを教えてくれる余裕があったんです。新人を使う場合は、現場も責任持って一人前にしたいと。得るものを持ってから大海にリリースしたいという。

 若山さんは父のことを知っているわけで、『なんとか連ちゃんの名に恥ずかしくないようにしたい』という想いが強かったようで、厳しかったです。
 
 ほとんどが接見室での面談シーンなのですが、そこでする芝居に対して『お前、分かっているのか。気持ちはできているのか』と言われて。僕は正直に『できていません』としか言いようがないんです。そうすると現場をストップさせて『便所に入ってこい!』って言われて。トイレの個室に入っていると何度もADさんがノックしてくる。『佐藤君、気持ち、できた?』って。

 中座した現場を何とかしないといけないというのは素人なりにも分かったので、『できません』と言えなくなって、必死に若山さんの前で芝居をさせていただきました。そういう毎日でしたから、どんどん下を向くしかなくてカメラマンには怒られるし、セリフも細くなるから声も録れない。

 このまま役者を続けるのは、どうしようかとは思いました。ただ、上手くいかないまま学校に戻るということが自分の中で整合性とれなくて」

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン