すでに全国各地で真夏日を記録するなど、夏休みシーズンが近づくにつれ、孫の帰省を心待ちにしているシニアも多いはず。だが、ここ数年、新たな夏の風物詩に苦しめられている高齢者が増えているという。
東北地方に暮らす佐々木雄二氏(仮名・63歳)が、ため息まじりに打ち明ける。
「お正月とお盆に遊びにくる孫の顔を見るのが楽しみだったのですが、去年ぐらいから孫との時間を心から楽しめなくてね。昨夏、孫の『お盆玉ちょうだい』って言葉が頭に残っていて……。孫に会うにも、お金が必要な時代なんですかね」
聞き慣れない言葉だが、この「お盆玉」が夏の新常識となりつつある。
お盆玉とはお年玉のお盆版のことで、山形県の一部地域で江戸時代に行なわれていた風習が起源とされている。当時、奉公人に衣類や下駄を贈る「お盆小遣い」という風習があり、昭和初期に子どもにお小遣いをあげる習慣に変化したと言われている。
現代によみがえったのは、山梨県に本社を構える企業が2010年に「お盆玉」を商標登録し、ポチ袋を「お盆玉袋」として販売したことがきっかけだ。2014年からは郵便局も取り扱うようになると、一気に全国へと広まった。日本郵便の広報担当者がいう。
「2015年のお盆玉袋の売り上げが前年を上回ったことからも、需要は確実に高まっていると感じています。今年の売り上げも、昨年を上回ると予想されています」
お盆玉の相場はお年玉と同等、もしくはそれよりも若干少ない金額とされている。ちなみにお年玉の相場は、「年齢÷2×1000円」が一般的だ。
思いもよらぬ新たな文化の出現に苦悩するのは、冒頭の佐々木氏をはじめとするシニア世代だ。