辞任した舛添要一・前東京都知事の疑惑で再びクローズアップされた政治とカネの問題。国会議員や大きな自治体の首長にどうしても注目がいきがちだが、実際には都道府県議会や市区町村議会の議員たちのほうが後ろ暗いだろう、と経営コンサルタントの大前研一氏は指摘している。舛添問題と、これから始まる都知事選が、地方自治体と議会の実態を根本から作り直す契機になるか。
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(舛添氏よりも)むしろ“脛に傷を持つ”のは都道府県議会や市区町村議会の議員たちだろう。
実際、私が1995年に東京都知事選挙に出馬した際は、都議たちがいかに利権にまみれているかという情報が、都庁職員からファクスで続々と届いた。
たとえば、東京都の施設に設置されている自動販売機は1台1台すべて、都議ごとに利権が決まっていて、そのリストを送ってきた。あるいは、都立現代美術館が新設された時は、そこに展示する絵画や彫刻などの作品ごとに、それを納入する画商と口利きする都議のリストが送られてきた。業者への“口利き利権”を、与野党を問わず都議たちがあらゆる分野で分け合っている実態がそこにはあった。
また、野党議員の中には、住民反対運動を利権にしている者もいる。つまり、自分の選挙区でビルやマンションなどの建築計画が立ち上がると周辺住民の反対運動を組織し、住民の“代弁者”となって施主や建設会社と交渉する。そして騒音対策費などの名目で補償金のようなものを獲得したら、それを住民と折半するという仕組みである。
これらを全部ひっくるめると、地方議員がいかに利権まみれかがよくわかる。多くの議員は、叩けば山ほど埃が出てくるはずだ。この話は20年以上前のことだが、もし都議たちが今は違うと言うならば、都議全員の“総当たり制バトルロイヤル”で、お互いの利権の有無を追及し合えばよい。
産経新聞(5月18日付)によると、都議の年収は1700万円超で、議会に出席すれば1日1万~1万2000円の“日当”も支給される。この報酬と月60万円の政務活動費などを合わせた127人の都議の“人件費”に、それを支える議会局職員約150人分の給与などを加えると、都議会維持費用の総額は56億円に上るという。
なのに、今年3月の都議会では舛添都知事が提出した全議案を原案通り可決した。原案可決率100%という異常事態が、少なくとも3年以上続いている。要するに、都議たちは全く仕事をしていないのである。舛添氏の絵画や中国服の購買を追及する立場にないことは明らかだ。