元俳優の高知東生が覚醒剤と大麻の所持容疑で逮捕された。メディア、ネットでは高知への激しい非難が繰り広げられている。そこにコラムニストのオバタカズユキ氏は違和感を持った。
* * *
ファンでも知り合いでもなんでもない。それどころか、俳優時代の彼にはいい印象を持っていない。いけ好かない奴だと感じていた。
しかし、今は、高知東生を勝手に擁護したいのだ。覚醒剤と大麻の所持で逮捕されて以来、彼についての言いたい放題が目に余るからである。
たとえば、マスコミやネット世間は、次のような声で溢れかえっている。
「普通ありえない4グラムもの覚醒剤を所持していたのだから、売人をやっていたに決まっている」
「シャブに不倫に偽装介護、3悪一気にだから始末に負えない」
「女好き、ウソつき、元ヤンで知られた芸能人が、クスリで捕まるのはむしろ自然な流れという件」
「タダのヒモだし、仮面夫婦だし、芸能界きっての高島礼子とおしどり夫婦だったとか笑わせてくれる」
「大物女優の夫なだけっていうコンプレックスが原因。結婚は本人がしたくてしたっていうか、逆玉の輿を狙ってたんだから自業自得」
挙げればキリがない数々の悪口。中には事実を指摘したものもあるだろう。だが、ここまで叩かれる一方という薬物依存症関係の事例は珍しい気がする。
今年の2月、同じく覚醒剤所持で現行犯逮捕された清原和博についても、マスコミ世間は大きく取沙汰した。いろんな人が言いたい放題をしていた。けれども、高知東生に対するほどの滅多打ちではなかった。
「黄金時代を築いた後の人生は大変なんだろうね」と清原が内に抱えていたものを忖度するような声も混じっていたし、「あいつは、ほんとバカ者なんだ。これできっと懲りただろうから……」と親戚のおじさんがヤンチャな甥っ子を庇うような声も聞こえてきた。
この清原と高知の差は何か。それは単に、清原が大物で、高知が小物だからだと思う。清原の場合はまだ味方がいる。ファンに反撃されるかもしれないので、さじ加減が必要である。比して、高知にはもう何もない。リスクゼロだから叩くだけ叩いちゃえ!
世間の大方はそのように空気を読み、ヒトを攻撃することの快感に酔っているような気がしてならない。
俳優の中野秀雄はツイッターに「反省しろ!!友としてはそれだけだ」と、逮捕された高知に対してと思われる言葉を書き殴った。その他に、高知の身を案じているようなコメントを出している芸能人・著名人は見当たらない。逆に、とても目立っているのが、テリー伊藤の高知東生批判だ。
伊藤がTBSの「白熱ライブ ビビット」で出したコメントが、新聞各紙などで記事となって出回っている。曰く、こんな調子。
(高島礼子の父親の介護に専念するとして芸能界を引退したことについて)「覚醒剤は以前からやっていた。芸能界にいるとバレるから、覚醒剤を選んだ。介護を盾にして。そういうことも考えられる」(6月28日「デイリースポーツオンライン」参照)
(逮捕時に捜査員に対し高知が「来てもらってありがとうございます」と話したとされることについて)「軽い言葉。本当に更生したいならこんな言葉は出ない。ふざけるなと言いたい」(6月29日「スポニチ・アネックス」参照)
(清原は移送の際に下を向いたままだったが、高知は)「普通は下を向くが『俺は捕まったときにはああいう態度はとらないぞ』という意思だと思う。たぶん、今現在も反省していない」(6月28日「東スポWEB」参照)
視聴者の気持ちをここぞと代弁したつもりかもしれないが、これが芸能界で長く生きてきた者の認識ならば呆れる。よく言われているように、芸能界には覚醒剤をはじめとした薬物依存症者が多いはずだ。伊藤はその実例を多数見てきたはず。しかも、いちおうコメンテーターである。薬物依存がどれだけ重篤な病気であるのか、当然ご存知だと思うが、もしやまるで無知か?