厚労省が2015年に発表した日本人の「平均寿命」は男性が80.50才、女性が86.83才。平均寿命はこの70年間でなんと30才近く延びている。ちなみに平均寿命とは、0才児があと何年生きられるかという平均余命を指す。
一方、最近注目されている「健康寿命」という言葉。これは、介護の必要や障害があるといった生活の支障がなく、健康に日常生活を送れる年数を指す。
厚労省によると2013年の健康寿命は、男性71.19才、女性74.21才。平均寿命との差は、男性で約9才、女性で約12才となる、つまり、死ぬまでの10年前後を不健康な状態で過ごすのが、平均的な日本人の老後というわけだ。
そんな健康寿命を表す指標として、先日新たな研究結果が報告され話題になった。それは、茨城県立健康プラザ研究員で、聖徳大学看護学部教授の栗盛須雅子さんが健康寿命を調べたもの。特筆すべきは2010~2014年の5年間にわたる調査ということ。また、健康寿命のとらえ方が厚労省と異なる点にも注目したい。
厚労省は、一定の障害があると健康に生活できないという考え方(無障害健康余命)だが、栗盛さんは、例えば足が悪かったり、耳が遠いなどの障害の程度を調整して、健康に生活できるという考え(障害調整健康余命)で調査している。
これはWHOが採用している方法で、より実態に即した研究結果だといえる。さらに厚労省の調査では、介護の有無は自己申告だが、今回は、介護保険認定者の65才以上が調査対象となっている。
「どんなに検査の結果が100点満点で、何不自由していなくても、“健康じゃない”と答える人がいます。一方、歩くのに杖が必要な人でも“健康だ”という人もいます。
『健康』と聞いて感じることは人それぞれ違って主観的なものなので、何が正解で不正解か明確な基準がない。そのなかで、私たちは、健康寿命を算出するにあたって、要介護度の程度を数値化したものを加味しています。例えば支援を受けていない人が『1』とすると、要支援1の人は『0.8』というようにです」(栗盛さん)
こういったランキングでは当然上位に入った県のほうが注目を集める。しかし今回は違った。なぜなら、これまで長寿のイメージが強かった沖縄が、男性ワースト1位、女性ワースト2位というこの結果となったからだ。
平均余命に占める健康余命の割合を見ると、男性の1位は茨城93.03%、女性の1位は静岡87.15%。沖縄は男性が最下位で90.44%、女性が46位の83.72%とのデータが出た。
「この数字は、65才の平均余命を100と考えたときに、健康的に過ごせる期間の割合を表したものです。沖縄は男性が90.44%、女性が83.72%。単純にいうと、女性は65才の平均余命の約16%、男性は1割の年月を、介護や何らかの障害がある状態で過ごすということです」(栗盛さん)