昨今注目されている「健康寿命」という言葉。これは、介護の必要や障害があるといった生活の支障がなく、健康に日常生活を送れる年数を指す。
厚労省によると2013年の健康寿命は、男性71.19才、女性74.21才。平均寿命との差は、男性で約9才、女性で約12才となる、つまり、死ぬまでの10年前後を不健康な状態で過ごすのが、平均的な日本人の老後というわけだ。
そんな健康寿命を表す指標として、先日新たな研究結果が報告され話題になった。それは、茨城県立健康プラザ研究員で、聖徳大学看護学部教授の栗盛須雅子さんが健康寿命を調べたもの。特筆すべきは2010~2014年の5年間にわたる調査ということ。また、健康寿命のとらえ方が厚労省と異なる点にも注目したい。
厚労省は、一定の障害があると健康に生活できないという考え方(無障害健康余命)だが、栗盛さんは、例えば足が悪かったり、耳が遠いなどの障害の程度を調整して、健康に生活できるという考え(障害調整健康余命)で調査している。これはWHOが採用している方法で、より実態に即した研究結果だといえる。
さらに厚労省の調査では、介護の有無は自己申告だが、今回は、介護保険認定者の65才以上が調査対象となっている。これまで長寿のイメージが強かった沖縄が、男性ワースト1位、女性ワースト2位というこの結果となった。
沖縄県庁には『取り戻そう!健康長寿おきなわ!!』『2040年長寿世界一』と書かれたのぼりが掲げられている。エレベーターに乗ると、階数を押すボタンの上に「目指せ1万歩」の標語。無意識のうちにエレベーターを探す日々を送る身にとってはヒヤリとした。
ナンバーワン戦略研究所所長・矢野新一さんが「沖縄の人は海が近いのに泳がない。日差しが強いから、外に出たがらないんですよ」と指摘するように、昼間は外に出ない。実際レジャー行動率は沖縄が全国最下位だ。
そして外へ出るときは車を使う。「300m先でも車で出かける」と揶揄される沖縄。長寿を取り戻すためのプロジェクトの一環として琉球放送が制作したコマーシャルでも、野球選手が1塁から2塁までタクシーで移動する姿が自虐的に描かれている。
高齢者には「今日用事がある」ということが大事だといわれている。国の介護予防指針の1つにも、家から15分以内に集える場所、行く場所があるということが重要視されている。そのため全国各地に、地域包括センターが点在している。
もちろん沖縄にもある。県庁所在地の那覇市役所福祉部ちゃーがんじゅう課包括支援グループもその1つ。ちなみに“ちゃーがんじゅう”は沖縄の方言で“いつまでも健康でいてくださいね”という意味だ。担当者が説明する。
「沖縄は戦争の影響もあり高齢者が少なく高齢化率は約20%ですが、今後急速に高まってきます。市は介護予防に取り組み、65才以上を対象にした教室を開いています。しかし、参加者が少ないのが現状です」