ヒトの体は、約37兆個の細胞で構成されており、細胞は周囲の状況に応じて増えたり、増殖をやめたりしている。こうした過程で、細胞の遺伝子に、いくつか傷がついて変異することがある。がんは、この変異が多段階で複数の遺伝子で起こり、それが積み重なることで発症する。
遺伝子検査は、最適な抗がん剤を見つけるために実施する。現在、抗がん剤は、がんが発生した場所(がん種)や、組織型(腺がんや扁平上皮など)に基づいて治療薬が選択されている。また保険も、がん種に応じて適用が規定されている。ところが、抗がん剤は同じがんでも人によっては効果がある時と、そうでない場合があるのだ。
北海道大学病院がん遺伝子診断部の西原広史統括マネージャーに話を聞いた。
「がんには、それぞれ個性があります。その個性を決めているのが、がん細胞の遺伝子の異常です。この遺伝子の異常は人によって違い、それがわかれば、最適な抗がん剤で効果的な治療が可能となります。このために実施するのが、がん遺伝子診断です。北大病院では、この4月から患者さんの医療サービスとして、がん遺伝子診断外来を開設し、検査を始めました」
北大病院では、2年前から患者の組織や細胞、血液などを保管するバイオバンクをスタートさせている。クリニカルバイオバンクというコンセプトで、研究だけでなく臨床現場でも治療に生かす目的で実施している。バイオバンク運営で培われた細胞保存や、解析技術などからオリジナルのがん遺伝子検査システムを作り上げた。このシステムは、クラーク検査と名付けられ、複数の遺伝子変化を網羅的に検査できるのが特徴だ。