金具がないのがメリットの入れ歯に対して、「金具をつければ保険適用にできる」という不条理を突きつけるのが日本の歯科医療の現実だ。厚労省保険局医療課の担当者はその理由をこう回答した。
「新しい歯科技術が保険対象に認められるには、関連学会などから上がってくる医療技術評価などを厚労省で審議し、導入する流れになる。ノンクラスプ式の義歯に関しては学会などから提案が上がっていないため議論もしていない」
審美性の問題や口の中の違和感を理由に入れ歯を忌避し、健康な歯を削るブリッジ治療を選ぶ人も少なくない中で、「金具のない入れ歯」を患者の選択肢として提示することに意味があるはずだが、国は対応していないのだ。
●レポート/岩澤倫彦(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2016年7月15日号