入院や通院の費用がかさんだ時、頼りになるのが「高額療養費制度」だ。これは、ひと月あたりの医療費が高額になった際、自己負担額の上限を超えて支払った医療費を患者に支給する制度だ。国民健康保険や健康保険組合や共済組合など、公的医療保険に加入して、日本に居住していれば、支給申請書を提出、または郵送することで誰でも利用できる。
自己負担の上限は年齢や所得などで異なるが、70歳未満で年収約370万~約770万円の世帯の場合、自己負担の月額が約8万100円を超えると、それを超えた医療費が支給される(※注)。
【※注/正確には自己負担が8万100円を超えた場合、「8万100円+(かかった医療費-26万7000円)×1%」を超えた医療費が支給されることになる】
日本医療事務協会の藤野京子氏が解説する。
「原則として患者が治療費を全額立て替え払いしたのち、加入する健康保険組合などに申請して払い戻す仕組みです。申請の期限は2年間です。申請から支給までは少なくとも3か月程度かかりますが、事前に健康保険組合などに『限度額適用認定証』を申請して認定証を受け取っていれば、医療機関の窓口での支払い時に上限額を支払うだけで済みます」
たとえば、がんの治療にひと月100万円かかった場合の自己負担額は30万円。さらに、この制度を利用すれば、患者の支払いは上限の約8万7000円で済むのだ。
また複数の月で高額医療を受けた場合には上限額が下がる。前出の70歳未満で年収約370万~約770万円の世帯の場合、1年間に4回目以降の申請ならば、自己負担の上限は4万4000円になる。
だが、政府や病院はなぜか積極的に広報していない。2013年に実施された全国健康保険協会(協会けんぽ)の調査(『医療と健康保険に関する意識等調査』)では国民の約4割が制度内容について「初めて知った」、または「名前を聞いたことがあるが、内容までは知らなかった」と回答している。