芸能

長谷川京子「恋に落ちるアラフォー主婦」役はなぜ残念なのか

番組公式HPより

 女性の職場復帰は芸能界においてもひとつのトレンドといえるかもしれない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 テレビで「F2層」と言えばご存じ、35歳から49歳までの女性視聴者のこと。でも、今私が注目しているのは、F2層の「女優」です。

 若い時に脚光を浴び、いったんは結婚・出産でお休み。子育てが一段落した段階で、もう一度職場に復帰。そしていよいよ主役の座に返り咲く現象が、昨今、目につきます。

 今放送中のドラマで言えば、『ふれなばおちん』『朝が来る』でそれぞれ主役を演じる長谷川京子、安田成美。そして8月には鈴木保奈美も主役で登場……。30~40代になった彼女たちは、若い時の人気で知名度が高いだけに、復帰しやすいのかもしれない。

 しかし、だからと言って、「中年の女優」として成功するかどうかはまた別の問題。平凡な主婦役こそ、ムズカシイ。犯罪に手を染める中年女の役はまた、複雑。年齢が持つ奥行きを味わいに変えていくには、小手先の演技では無理。役者としての技術や才能はもちろん、思考力、人生の苦労も糧にしてしまう力、そして「決意」も問われるのではないでしょうか。

 その意味で、F2女優への復帰は、大きな勝負。打って出る甲斐もあるし、失敗の危険もまた半端ないのでは。

●中年ハセキョーの挑戦

「もう女を捨てたと思っていたのに……」。年下の男にトキめき、恋に落ちるアラフォー主婦・上条夏。『ふれなばおちん』(火曜午後11時15分 NHKBSプレミアム)は長谷川京子が主役・夏を演じる、まさしくF2ど真ん中ドラマ。

 夏は、Tシャツにパーカーを羽織り化粧っ気なく髪の毛はバサバサ、「女を捨てた感」満載の主婦という役どころ。性格もちょっと天然の入った三枚目の2児の母。ある日、夫の職場で働く年下男性が社宅の隣に引っ越してきて、モーションをかけてくる。背後から抱かれたり、いきなりキスされたり。

 ところが。長谷川さん演じるこの主婦、キスされてもぼぉー。即座に反応しない。宙を見たまま、まるで居眠り? 身ぶり手ぶり、存在感がなんとも宙ぶらりんで、視聴者側はこの人物をどう情報処理をしたらいいのか、とまどう。そんな主婦いるのかとイライラしてしまう。

 敢えて「ボケ」を狙っている? 女を捨てた主婦が恋に落ちる変化のプロセスを、際立たせるため? あるいはシリアスな不倫ドラマにしたくない、ちょっとコミカルなテイストにしたい、という意識なのか。

 それともモデル出身、正統派美人として人気を集めた過去の自分を、三枚目に落とし込むことで変えようとしているのか……などと、いろいろ余計なことを考えさせられてしまいます。長谷川さんは今37歳、実生活でも2児の母。しかし、美人女優という過去のシッポを引きずっているためか、ダサい格好をしスッピンだからといってそこらへんの主婦にはとても見えないし、かと言って、かつての美系オーラも消えかかり、残念ながらものすごく中途半端。

 人物設定も曖昧。夫が帰宅し夕ご飯を食べている間、妻は会ったばかりの独身男の部屋へ上がりこんでシャンパン飲んで呑気におしゃべりなんて、ありえないのでは。誰もダメ出ししないの?

 このドラマを見て痛感しました。F2女優として生きていくためには、本気で捨てる「決意」が必要なのではないか、と。「覚悟」というものが一番重要ではないか、と。かわいいキレイ、スレンダー、美肌、アンチエイジング、そういった女優的自意識すべて丸ごと「捨て去る覚悟」があって初めて、F2女優の演技の一歩が踏み出せるのではないか、と。

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン