新たな可能性に期待する空気が漂うのが2歳新馬戦。将来性あふれる若駒の姿は観ているだけで気分が浮き立つ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、3歳未勝利戦がもつ重要な意味について解説する。
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ここまで勝てなかった馬を、なんとか勝たせてやる。技術的なことも含めて、厩舎に必要不可欠な課題です。3歳未勝利戦は9月の中山、阪神開催まで。ここでの未勝利戦は「前走5着以内」または「前走までのキャリアが5走以内」という馬に限って1回のみの出走となります。「負ければ最後」という崖っぷちですが、結果的に濃縮された強い馬が集まり、「スーパー未勝利戦」などと呼ばれています。
つまり、すでに6回走った馬で前走が6着以下だった場合はここに出ることが叶いません。中央登録を抹消して引退するか、地方へ移籍して2勝して出戻るか、格上の500万円下条件に出るという選択肢しかなくなるわけです。
陣営としては、8月の3歳未勝利戦でなんとか勝っておきたい。あるいは、8月後半のレースでなんとか5着以内に入れるよう調整することになります。
クラシックに向かうような強い馬たちの競り合いもあれば、生き残りをかけたシビアなものもある。両方ともに極めて大事な戦いです。なぜ勝てないのか。メンタル面で弱い(優しすぎる)、体ができていないなど、それぞれに理由があります。
大敗の理由は比較的分かりやすい。しかし2着や3着が数回続くような場合、惜しい競馬だったというより、そのほうが居心地がいいと思ってしまう可能性もあります。3頭併せの馬なり調教を繰り返していると、抜きん出るよりも並んでゴールすればいいと勘違いすることも。そのあたりを疑えば、坂路でしっかりと差をつけてかわす調教に切り替えます。不調の核を見極める感性が必要です。