選挙権は18歳から、お酒は20歳から。ではそのCMは? 食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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今月1日、酒類関連9団体でつくる「飲酒に関する連絡協議会」が、広告・宣伝に関する自主基準を一部改正し、施行した。CMなどの広告において「未成年者をモデルに使用しない」という基準が、「25歳未満の者を広告のモデルに使用しない」「25歳未満にみえる表現はしない」に変更されたのだ。
直接の端緒となったのは、2014年6月1日に施行された「アルコール健康障害対策基本法」だったが、この十数年、世界的にアルコールに対する風当たりは強くなってきていた。
2003年にWHO(世界保健機関)で「たばこ規制枠組み条約」が採択され、アルコールが次なるターゲットになるのは自明の流れだった。2005年にはWHO加盟国に有効な戦略とプログラムの策定が要請され、2010年のWHO総会で「アルコールの有害な使用を提言するための世界戦略」が採択された。「たばこ規制枠組み条約」のような法的拘束力はないものの、加盟各国には対策への取り組みが求められるようになった。
その一環として、日本でも法律が制定され、2016年度から2020年度までのおよそ5年間が「第1期アルコール健康障害対策推進基本計画」に設定された。早口言葉にでもなりそうなずいぶんと長い名称だが、重点課題として未成年者や妊産婦、若い世代に対する教育・啓発に力を入れることになったというのだ。
実はこの「25歳未満の者を広告モデルに使用しない」という方針は、昨年の時点で、ほぼ策定されていた。酒類の広告には法規制がなく、業界が自主基準を作っている。アルコール健康障害対策基本法を受け、設置された専門家による作業部会の意見を踏まえ、協議会で議論がたたかわされてきた。
25歳未満のタレント起用自粛は「若いタレントのCMは未成年者にも飲酒への関心を高めている」との指摘を受けて、2015年8月31日に内閣府の作業部会で報告されていたもの。参考にしたのは、18歳から飲酒できるオーストラリアと、21歳からのアメリカの例だったという。両国では、CMに「明らかな成人」として出演できるのは25歳以上と定めていたのだ。