韓国の警察官の制服がこの夏(6月)から変わった。これまでの明るいブルーから濃いマリンブルー(青緑)になり、ちょっぴり重厚感(?)が出た。ただ、交通警察官は目立たないといけないので、明るい白系のアイボリーホワイトになっている。
10年ぶりの衣替えだが、警察叩きが大好きなネットメディアからは早速、「洗うと色が落ちる」とか「インドネシアの警察を真似した」などとイチャモンをつけられている。
韓国の警察の最大の課題は「権威の回復」といわれて久しい。韓国では「市民に食ってかかられる警官」「酔っ払いに殴られる警官」「デモに押しまくられる警官」……が日常風景だからだ。「制服が重厚になったのを機に少しは権威を取り戻してほしい」というのが善良な市民の声だ。
韓国のテレビニュースにはよく、夜の交番で酔っ払いが暴れるシーンが登場する。交番内でイスを投げたり警官に殴りかかったり、とにかく警官の言うことを聞かないのだ。交通違反でも、つかまったドライバーはきまって大声で文句を言い、食ってかかる。
デモ現場でも負傷者は圧倒的に警備側が多い。なのに、メディアに出る写真のほとんどは、デモ側が機動隊に規制されるシーンだ。不法デモで公務執行妨害をやっても警察がいつも悪者扱いなのだ。
韓国で警察がバカにされてきた背景としていくつかの指摘がある。ひとつは「権力の手先」と見られ、弱い者イジメをするというイメージ。あるいは上から下までワイロまみれという腐敗イメージなどがそうだ。
ただ、一方で市民、国民は法治意識が弱い。だから法をタテにした警察の取り締まりにはすぐ反発し、従わない。「権力の手先」感は過去、1980年代までの軍事政権時代の名残だが、その後、民主化時代になって「民の声」が強くなり、法治意識はいっそう後退した。まるで法治=警察を無視しバカにすることが民主化といわんばかりの風景が目立つ。
たとえば先年、ソウルの中心街で再開発のビル撤去をめぐって大もめし、ビルを不法占拠した住民や活動家と機動隊が激しく衝突した(龍山事件)。住民サイドが火炎ビンで抵抗したため火災となり、住民サイドに数人の死者が出た。原因は明らかに火炎ビンだった。
ところが国会やメディア、世論の大勢は「過剰警備が原因だ」とする住民サイドの主張に同調。当時のソウル市警察庁長(警視総監)は辞任に追い込まれた。法秩序より警察叩きが優先しているのだ。