7月10日に初日を迎えた大相撲名古屋場所。史上3人目となる1000勝(魁皇・1047勝、千代の富士・1045勝)に挑む横綱・白鵬は昨今、横綱らしからぬ言動を指摘され、バッシングされている。これまで批判に対して彼は多くを語らず、貝になった。真意を聞くべく、ノンフィクションライターの武田葉月氏が直前合宿に密着取材した。「沈黙の横綱」の衝撃の独白である──。
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昨年から続くあらゆるバッシングで、人を信じられない気持ちになったことは事実です。
〈2015年初場所で33回目の優勝を飾り、大鵬を抜いた白鵬だが、優勝から一夜明けて行なわれた会見がトラブルの発端となった。
13日目の稀勢の里戦での「同体、取り直し」を振り返り、「子供が見てもわかる相撲。もう少し、緊張感を持ってやってほしい」と発言したことが、「審判部批判」と取られた。
以来、白鵬は「貝」になり、自ら言葉を発することが激減した。また、勝負が決まった後のダメ押しのような動作や、下位力士に対しての猫だまし、さらには懸賞金の受け取り方に至るまで、白鵬の一挙手一投足が批判の対象になった〉
(稀勢の里戦の)相撲を何度も見直しましたが、「なんか違うんじゃないか?」という思いは変わりませんでした。あの場で、稀勢の里関と私のどの部分が同体だったのかという説明があれば、私たちも、お客さんにもわかりやすかったと思うんです。
単純にそれだけの疑問だったのに、あの言葉が悪目立ちしてしまい、人々から反感を買ってしまったのは反省すべき点です。
「人は1000回良いことをしても、たった1回の失敗で別の見方をされてしまうことがある」と聞いたことがありますが、まさにそんな災難が私に降り掛かったと思いました。
もう私のことなんて誰も応援してくれないのではないか? そんな思いすら持っていましたが、この合宿では多くのお客さんが集まってくれ、私に声援を送ってくれた。
なかには「名古屋場所も稀勢の里に勝ってください!」なんて具体的な声をかけてくださる方もいた。「あぁ、まだ私のことを応援してくださっている人もいるもんだなぁ」って感激しました。
先場所の稀勢の里戦での雰囲気は、まるでアウェーのようでしたからね。