「もう二度とこんなふうにカメラの前に立つことはないと思っていた」──『クウネル』(マガジンハウス刊)9月号から新連載「伝説のおしゃれミューズ」をスタートさせた小林麻美(62才)は、そんな思いを口にしているという。
25年ぶりに私たちの目の前に現れた彼女は、167cmという長身に華奢なスタイル、そして柔らかいウエーブのかかった黒髪。あの頃の面影を残しながらも、確かな時間を重ねてきたからであろう、いっそう上品なカッコ良さをまとっていた。
小林麻美は1970年、文化学院在学中に『ライオン』のCMで芸能界デビュー。その後、モデル、女優、エッセイスト、歌手、詩人、写真家などと、なんでもこなす多才の人だった。当時の彼女を知るスポーツ紙記者が振りかえる。
「きらびやかではないけれど、いつもどこかでキラめいていたという印象の、特別な存在感でしたね。大原麗子が“少し愛して、なが~く愛して”で男性たちのイイ女の代名詞だったのが1970年代後半から1980年代にかけて。その大原さんに代わって新たなイイ女の代名詞になっていったのが小林さんでした」
ワイドショー関係者が言う。
「1980年代は、“ファッショナブル”という言葉を聞いて10人に8人が小林さんを頭に思い描いていたと思います。それでいて、神経性胃潰瘍で休養したりする時期もあるんですが、華奢なスタイルもあって、思わず支えたくなるような、どこか寂しげで儚げな繊細な雰囲気がありました。私の周りの男たちは、“小林麻美っていいよな”って話題をよくしてましたね」
1984年に小林の旧友、松任谷由実(62才)が日本語歌詞をつけたカバー曲『雨音はショパンの調べ』が大ヒット。さらにアルバム『CRYPTOGRAPH~愛の暗号』で第26回日本レコード大賞優秀アルバム賞を受賞した。そして1988年、最初で最後の日本武道館コンサートを開催し伝説となった。