真夏の東京都知事選はつまらなかった参院選の反動か、異様な熱気を帯びている。派手なパフォーマンスが目立つ「フライング出馬表明」の小池百合子氏と「後出しじゃんけん」の鳥越俊太郎氏を追うのが、自公推薦候補である元岩手県知事・増田寛也氏だ。
7月17日には10人ほどの黒服、インカム姿のボディガードやライトグリーンのおそろいのTシャツを着たスタッフなど総勢約20人の選挙軍団を引き連れて小田急町田駅前の繁華街を練り歩いた。いわゆる「桃太郎戦術」である。
「都政の混乱、山積する課題をまず克服したい。ぼやぼやしている暇はないんです。待機児童8500人、実際はもっといっぱいいるんです。私ならこうします。知事就任1か月以内に地域毎のプログラムを作ります。都議会に補正予算を要求し、地元の市長と話し合って解決策を提示する。保育所の問題は本当は市区の仕事です。でも都がしっかり支えていく」
演説は丁寧なのだが、ライバル2人と違ってマジメ一辺倒。足を止める人はまばらだ。それをカバーするのが組織力のはずだった。しかし、今回の増田氏はその“後ろ盾”のせいで集中砲火を浴びている。
小池氏は各所の演説で増田氏の「(出馬には)スカイツリーから飛び下りるくらいの覚悟がいる」との発言に対し、「(自公の推薦という)パラシュートをつけて飛び下りるのは覚悟とはいえない」と非難、聴衆から拍手が上がった。
新聞の序盤の世論調査では与党分裂選挙の影響では、〈自民党支持層の3割以上が元防衛相の小池百合子氏に流れ、党が推薦する元総務相の増田寛也氏は約3割を固めるにとどまった〉(産経新聞7月18日付)と報じられた。自民の基礎票が小池氏に食われているという分析だった。
増田氏の劣勢が伝えられると、自民党本部は猛烈な組織引き締めに動き出す。7月19日には自転車転倒事故で入院しているはずの谷垣禎一・幹事長や茂木敏充・選対委員長ら幹部の連名で所属全議員にお触れを出し、都内の有権者あてに出す公選ハガキを職員一人あたり30枚を割り当て、さらに各都道府県連を通じて各支部に都内の知人など有権者の名簿を提出するよう指示した。
北関東選出の自民党議員が悲鳴を上げる。
「いきなり選挙区から遠い東京の支持者名簿を提出しろといわれても。東京在住の秘書たちに友人、知人、その家族などの名簿を急いで作らせている」