六代目山口組・司忍組長の出身母体・弘道会のお膝元である名古屋で、射殺事件が起きた。それも、殺されたのは対立する神戸山口組の井上邦雄組長の出身母体・山健組系の幹部組員と発表された。弘道会と山健組という中核組織同士の抗争がついに始まったのかと暴力団社会は一気に色めき立ち、警察やメディアも情報収集に走り回った。
7月15日に斉木竜生組員が殺されたのは、名古屋市内のマンションの一室。外から男2人がマンションの一室に侵入し、中にいた斉木組員に発砲し、車で逃走したという。頭や胸の数か所を撃たれ、一緒にいた知人男性が通報し、警察らが駆けつけた。手口からしても、警察は暴力団の犯行とみて抗争の可能性がさらに高まった。
山口組抗争を取材するフリーライターの鈴木智彦氏もすぐに現場に駆けつけた。
「名古屋での山健組は弘道会の地盤のなかで四面楚歌のようになっていたので、いつ抗争が起きてもおかしくないと目されてきた。そのなかでの事件ですから当然一気に緊張感が高まった。事件直後には警察によって現場一帯が封鎖され、検問まで行なわれる物々しい雰囲気でした」
だが、その張り詰めた空気はすぐに解けていったという。
「神戸山口組側が『すでに組織から絶縁された人間でうちとは無関係』だと言い出したのです。私が神戸側の関係者から見せられた絶縁状には四代目山健組舎弟名義で、平成24年11月14日付で『絶縁致しました』と書かれていました。
これが事実とすれば、抗争とは無関係ということになる。対する六代目側も、一部には『絶縁状は偽造ではないか』と疑う向きがあるものの、上層部は『抗争とは全く関係がない』と言うので、暴力団社会は一気に沈静化しました」(同前)