全てのことが猛烈なスピードで移ろいゆくのが現代社会。そんななか、比較的変化が乏しいかと思われがちな教育現場でも、かつての常識がまったく通用しない変化が起きている。教育上の問題ではなく、「保護者や近隣住民への配慮」のために学校から消えたものもある。まずはチャイムだ。
「昔は全部の授業の始業と終業の時に鳴らしていましたが、いまは必要最低限しか鳴らしません。近所から『うるさい』という苦情が来るからです」(教育評論家・石川幸夫氏)
福島県の小学校校長は、別の理由を口にする。
「子供たちに時計を見て動く癖をつけさせるのと、教師も時間の管理を自分でできるようにするためです。あとは子供たちが何かに熱中している時に、チャイムで妨げたくないという理由もある。なので、うちの学校では朝と帰りしかチャイムは鳴らしません」
校庭で遊んでいた生徒たちが、予鈴を聞いて教室に戻る……そんな風景はもう見られないのか。同様に、近隣への配慮という理由から、校庭での朝礼で全校生徒が集まることもほとんどないという。
「各教室でテレビを見ながら、校長先生の話を聞く小学校は少なくない。ちなみに校長先生への挨拶も座ったままの学校がほとんどで、『起立、礼』なんていいません」(石川氏)
家庭訪問も変わった。かつては担任の先生に家に上がってもらい、じっくり子供について話を聞いたり、相談したりしたものだ。
「いまは玄関先での立ち話が主流です。差し障りがあって、『家に上がってほしくない』という保護者もいますから」(石川氏)
中には、「うちには来なくていい」と拒否する親もいるというから驚きだ。