厚生労働省の調査によれば、現在、日本では2800万人もの人が腰痛に悩まされているという。そのうち85%は原因がわからず、長期にわたって痛みと付き合うことを余儀なくされている。
そうした慢性腰痛に対して、原因が特定できる腰痛を「特異的腰痛」といい、なかでも近年、シニアを中心に患者数が急増中なのが「脊柱管狭窄症」だ。日本整形外科学会の調査によれば、国内の患者数は約350万人にのぼり、50歳以上の腰痛の最大原因と考えられている。
脊柱管狭窄症は、加齢に伴う背骨の老化などにより、腰椎の脊柱管(背骨にある脊髄中枢神経の通り道。脳から尾骨までつながる)が狭くなることで内部を通る神経を圧迫。それが原因で腰や下肢に痛みや痺れなどが生じる病気で、高齢になるほど発症率は上がる。
一般的な治療法は、消炎鎮痛薬、血管拡張薬の服用による薬物療法や神経ブロック注射(神経やその周囲に局所麻酔薬を注入)などだが、これらの治療で改善しなければ、神経の圧迫を取り除く外科手術が行なわれる。
だが、メスを入れても症状が軽減されないという声が後を絶たない。日本整形外科学会専門医で『清水整形外科クリニック』院長の清水伸一氏の話。
「当院のデータでは、外科手術まで受けた患者の約8割が下肢のしびれが残ったままでした。実際にMRIで脊椎管狭窄症と診断されても、それは仰向け状態のもので、日常生活の大半を過ごす立位や座位での狭窄とは違います。
その考えで診断をし直したところ、なかなか治らない脊柱管狭窄症に悩まされていた患者の大半が、脊柱管の外にも問題があることがわかったのです」
例えば、腰椎から足先まで伸びる坐骨神経が脊柱管を出た後、加齢により衰え硬直した腸腰筋や梨状筋(お尻の筋肉)などに圧迫されて、痛みや痺れが生じていたケースがあるという。