36万8103人――日本で2014年にがんで死亡した人の数だ。死亡者数は年々増加し、同時に罹患者数もまた増加の一途にある。
しかし希望はある。今、世界中で新薬や新治療法が次々と生まれ、医師たちの間では、「早期発見すれば治らないがんはない」という声もあがる。
抗がん剤は、点滴投与やカプセルなどの内服が一般的。しかし現在、新種の抗がん剤治療法として、「カテーテル超高濃度抗がん剤療法」が注目されている。最大の特徴は、「ピンポイント攻撃」が可能になったことだ。
直径1~1.5mmほどのカテーテルを太ももの付け根から大動脈に挿入し、がんの至近距離から高濃度の抗がん剤を注入する。がんの特性に合わせて選んだ抗がん剤をピンポイントで注入できるため、従来の投与法より大きな効果が期待できる。吹田徳洲会病院がんカテーテル治療センター長(大阪府吹田市)の関明彦医師が言う。
「従来よりも少ない抗がん剤の注入ですむため、副作用のリスクを極力抑え、体の負担を軽減できるというメリットがあります」
この治療法の特徴は、高濃度の抗がん剤でがん細胞を攻撃するだけではない。
「がん細胞は生きていくために血液を栄養とします。この治療法はカテーテルから抗がん剤と共にビーズと呼ばれる新規塞栓物質を注入し、血液の流れを低下させる。いわば、“兵糧攻め”を施してがんの成長を食い止めます」(関医師)
カテーテル療法は、原発巣(最初にできたがん)にも転移巣(転移したがん)にも効果がある。他のがん治療と併用し、治療全体の効果を上げることも可能だ。
医学の進歩により、放射線治療の効果は大幅に向上したが、その一方で弱点も残る。がん細胞は増殖するために多くの酸素を使うので、成長するほど細胞の周囲で酸素が欠乏する。ところが、放射線治療の効果は細胞の酸素量に左右される。がんが大きくなるほど治療効果が低下するのだ。
この難問を克服するために考案された画期的な方法が、オキシドール(過酸化水素)の注入である。発案した、加古川医療センター(兵庫県加古川市)の小川恭弘院長が説明する。