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「延命治療の発達が老人を苦しめる」現状にどう向き合うか

石飛さんは外科医から特養の常務医に転身した

 高齢化が進む日本社会で、介護は無視することはできない問題だ。その苛酷さゆえに「介護殺人」などという悲しい事件が起きてしまうことも珍しくない。とはいえ、どれほど苦しくても、介護には必ず終わりが来る。最終的な問題は、どうやって「死」という最期を迎えるかだ。

 医療技術の進化により、延命治療は飛躍的に発展した。現在は回復の見込みがなく、死期が迫る高齢の患者に胃ろうや人工呼吸器などを用いる「延命治療」が盛んに行われている。

 しかし、そんな医療のあり方に疑問を投げかける医師がいる。東京・世田谷区にある特別養護老人ホーム「芦花ホーム」の常勤医・石飛幸三さんだ。『「平穏死」を受け入れるレッスン』などの著書がある石飛さんは、延命治療の発達で老人がかえって、「苦しみながら死んでいる」現状に疑問を抱き、7年前に自然なかたちで死を迎える「平穏死」を提唱した。

 このホームには平均年齢およそ90才の高齢者100人が入所している。寝たきりになると食べなくなって、やがて緩やかに人生の終着駅に向かう──。

「ここの入所者の多くは、飛行機がゆっくりと軟着陸するように老衰死を迎えます。私自身、過去に数々の処置で人々を延命させたけど、それはまだ先のある人に対してだった。老衰の終末期にはできるだけ医療を減らし、自然の摂理に従って最期を迎えることが大切だと思います」(石飛さん)

 栄養摂取のため腹部に穴を開け、胃にチューブを入れて流動食を流し込む「胃ろう」は延命治療のひとつだ。

 現在、芦花ホームには胃ろうの利用者が14人いるが、うち13人は外部で胃ろうをつけてから入所した人たちで、無理な量を入れないようにしている。同ホームに入所後に胃ろうをつけたのは1人だけで、家族が「どうしても」と希望したからだという。

 胃ろうをつけるのはほとんどの場合、本人ではなく、「できるだけ生きてほしい」という家族の願いによるものだ。しかし、家族間でも延命治療の希望が異なることがある。

 91才の女性・近藤のぶ代さん(仮名)は脳梗塞で倒れたが、本人の希望で病院には入院せず、芦花ホームで暮らしていた。介護職員の援助で食事も少しずつ食べられるようになったが、誤嚥をきっかけに体調が悪化した。

 この時、付き添いの長女らは「最期までホームで過ごさせたい」と願ったが、仕事の都合で遠方に住む長男が現れると状況が一変した。

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