月刊誌「WiLL」(WAC)は、2004年の創刊以後、保守言論をリードしてきたオピニオン誌だが、今年4月、同誌の編集メンバーが飛鳥新社に移籍し、「月刊Hanada」が創刊された。中身も装丁も似通う二誌は書店に並ぶとうり二つ。読者を大いに戸惑わせたに違いない。そこで、保守論壇で活躍する評論家・古谷経衡氏に読み比べてもらった。
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「古谷さん、WiLLが分裂するんだって! なんか事情知ってる?」という電話が知己の編集者からかかってきたのは、2016年2月26日の昼のことであった。WACが発行する月刊論壇誌WiLLは保守論壇界きっての花形部数を誇る。そのWiLLが花田紀凱編集長以下編集部員全員を引き連れて飛鳥新社に移籍、新雑誌Hanadaを創刊するというのだから衝撃だ。
なんか知ってる? と言われても、私は単なる著者の一人であり報道以上のことは知らない。すると数日もたたぬうちにWACからくだんの「騒動」に関する一斉送信の手紙が二通も送られてきた。それは花田氏側を非難する内容であった。
一方花田氏も自らのネットなどで顛末などを公開、反論した。すわ裁判戦、両陣営全面戦争かと身構える。
結果、WiLLは残置され同社の「歴史通」編集長であり、「諸君!」元編集長であった立林昭彦氏が新編集長に就任する。双方にお世話になっている私にとって、両者の主張の正当性の是非を論じるのは忍びない。
しかし、確実に言えることは保守系論壇誌を購読する読者のパイ全体が増えているわけではない、ということだ。Hanadaの登場で、有力保守系月刊誌が『正論』とともに三立することになり、既存のWiLLを含めて読者の獲得競争が熾烈になるだろう。