交通渋滞は世界中で解決が望まれる問題だ。先日、中国では、他の乗用車が下をくぐれる立体構造の巨大バス試験運用が始まった。東京では、通勤時の満員電車が何十年も解決が待たれている問題だ。小池百合子新都知事は選挙で「満員電車ゼロ」を公約に掲げ、解決策のひとつとして2階建て車両の導入を提案している。フリーランスライターの小川裕夫氏が、2階建て車両は満員電車解決に結びつくのかについて検証する。
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7月31日に投開票された東京都知事選挙は、小池百合子さんの圧勝で幕を閉じた。小池新都知事は選挙戦から目玉政策として「満員電車の解消」を訴えてきた。確かに、通勤・通学時で満員電車に乗ることはそれだけでストレス指数が一気に跳ね上がる。学校や会社に到着する前に、すでに疲労困憊なんて人も多いだろう。
満員電車がなくなる――そんな小池新都知事のアイデアに賛意を示した人も少なくない。これまでにも、鉄道会社は混雑緩和策を講じてきた。それでも、満員電車はなくなっていない。小池新都知事の誕生で、本当に満員電車はなくなるのだろうか?
現在、東京のラッシュ時間帯は各路線とも混雑率100パーセントを超えている。もはや、満員電車は東京名物。満員電車がなくなれば、通勤地獄からも解放される。誰しもが満員電車に乗りたいと思っているわけではないから、「満員電車をなくす!」と宣言されれば、反対はしないだろう。しかし、そんな魔法使いのようなことが、都知事にできるのか?
小池新都知事は満員電車をなくす方法として、2階建て電車の導入を訴えていた。絶大な権力を持つ東京都知事だとはいえ、さすがに民間企業に指示は出せない。小池新都知事が2階建て電車の導入を指示できるとしたら、それは東京都交通局になる。
早速、東京都交通局に問い合わせてみると「2階建て電車を導入する予定はありませんし、検討もしていません」(東京都交通局総務部お客様サービス課)とキッパリ。
東京都交通局は地下鉄4路線を運行している。2015(平成27)年の統計で、もっとも混雑しているのは大江戸線7時50分~8時50分までの中井駅→東中野駅間(矢印は行先)で153パーセント。この混雑率は東京圏のほかの鉄道会社と比べて、むしろ低い部類に属する。
東京メトロは、もっとも混雑率が低い日比谷線でさえ三ノ輪駅→入谷駅間(7時50分~8時50分)が153パーセント、混雑がもっとも激しい東西線にいたっては木場駅→門前仲町駅(7時50分~8時50分)で199パーセントとなっている。
JRは、どの路線も平均して混雑率は高く、もっとも混雑が激しい総武線(緩行)の錦糸町駅→両国駅間(7時34分~8時43分)が199パーセント。私鉄でもっとも混雑している小田急線は、世田谷代田駅→下北沢駅(7時46分~8時48分)が191パーセントとなっている。