お家の食卓を制するもはスーパーの棚を制す。麻婆豆腐戦争がいま熱い。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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今年、麻婆豆腐がすごい勢いで存在感を増している。といっても、外食の話ではない。家庭の食卓の話だ。しかもレトルト。今年に入って、メーカー各社が続々とレトルトの麻婆豆腐の新商品を投入している。
先鞭をつけたのは、レトルト麻婆豆腐の代名詞としても知られている丸美屋だ。実は丸美屋の麻婆豆腐の素は今年、発売から45年を迎え、大々的に周年キャンペーンを行っている。2月にパッケージを改良し、3月には監督に『かもめ食堂』の荻上直子、俳優に朝ドラ『ごちそうさん』などの東出昌大を起用したCMの放送を開始した。
丸美屋の攻勢は続く。7月末には「初代麻婆豆腐の復刻版」を来年3月までの期間限定で発売。45年前の発売開始当時のパッケージと味わいも再現した。8月にはプレミアム商品群の「贅を味わう 麻婆豆腐の素」をリニューアル。ネギ油などの香味油で本格的な味わいをプラスし、辛口は一口目の辛さのインパクトに合わせてオイスターソースなどのうま味も増強。10月には東出昌大主演のCMの続編も投入される。
丸美屋の今年1~5月の売上は対前年比で7%増。とりわけ「贅を味わう~」シリーズは21%増と好調だ。その背景には、他社も含めてのレトルト麻婆豆腐市場全体の拡大がある。
そもそも、メニュー用調味料(合わせ調味料)市場において中華調味料のシェアは6割。そのうち麻婆豆腐は実に3割のシェアを占める。つまりメニュー用調味料市場をけん引するのが、麻婆豆腐であり、麻婆豆腐が伸びればメニュー用調味料市場自体の拡大にも直結する。だからこそ、各社とも「麻婆豆腐」に注力するのだ。
「ぐっさん」こと山口智充のCMが印象的な味の素の「CookDo」の麻婆豆腐も従来からの「四川式」と「広東式」に加え、2月に「あらびき肉入り」シリーズ4種類を発売した。「甘」(甜麺醤)、「白」(濃厚白湯)、「赤」(辣油・豆板醤)、「黒」(豆鼓・花椒・豆板醤)と新しい角度から消費者の選択肢を増やした形だ。