暑さが続くこの季節になるとよく目にするのが、「車の中に置き去り」というニュース。乳幼児が熱中症にかかって亡くなることもあるが近年は、啓発活動によりその危険性はかなり周知された。ところで、猛暑日に犬が車中に置き去りになっているところを目撃し、窓を割って救出した場合、罪になるか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【質問】
草野球の帰り、車の中に犬が置き去りにされていました。その日は猛暑で車内の犬はグッタリ。一刻も早く助けないと死んでしまうと思い、バットで窓を割ったのですが、20分ほどして戻ってきた車の持ち主は激怒、弁償しろと詰め寄られました。こういう場合でも、弁償しなければいけないのでしょうか。
【回答】
ある人の身体や財産に故意、または過失で損害を加えれば、本来は不法行為となります。しかしながら、その人による加害行為から自分や他人を守るためのやむを得ない行為である場合は、正当防衛として賠償責任を免れます。
今回の場合、犬が高温の車内に閉じ込められて瀕死の状態になっても車の持ち主の財産ですから、仮に故意過失があっても加害行為にはならないので、車を破損したのが犬を助けるためでも正当防衛は成立しません。
しかし、民法720条2項は「前項の規定(正当防衛の規定)は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する」と定めています。つまり、物によって差し迫っている危険を回避するため、その物を壊しても賠償責任がないのです。