自民党を中心に公明党、おおさか維新、日本のこころ、の「改憲4党」が衆参で3分の2の勢力を獲得し、憲法改正を発議できる環境が整った。安倍晋三・首相の憲法改正方針を強力にバックアップしているのが保守系団体「日本会議」だ。関連組織の日本会議国会議員懇談会には約290人の議員が参加する。
日本会議の田久保忠衛・会長は参院選後の会見で、「(改憲の)絶好のチャンスを迎えた。私が安倍さんであれば、この任期の間に全力を挙げて憲法改正を実現したい」と発言した。それでも、こと9条改正については自民党の日本会議国会議員懇談会メンバーでさえ一枚岩ではない。
閣内ではリベラル派閥・宏池会会長の岸田文雄・外相が「当面、憲法第9条自体は改正することを考えない」と語っている。さらに自民党最高幹部の高村正彦・副総裁も「10年先、何年か先は別だが、憲法9条が改正される可能性はゼロだ」との立場だ。
そのため、安倍首相の改憲戦略は揺れ動いてきた。9条改正のハードルが高いとみた首相がまず打ち出したのが憲法改正条項(96条)の改正だった。
国会では安倍側近の古屋圭司・元拉致担当相を会長に超党派の「憲法96条改正を目指す議員連盟」(96条改正議連)が立ち上がった。だが、まず改憲ルールを変えようという発想はメディアや改憲論者の学者からも批判を浴び、事実上、方針撤回に追い込まれる。
次に浮上したのが大規模テロや災害時に内閣に強い権限を与える「緊急事態条項」の創設だ。民進党など野党内にも支持する声があり、安倍首相はこの条項を突破口に憲法改正議論を進める狙いと見られている。“9条がダメなら96条”“それもダメなら緊急事態条項”というわけである。