夏に注目したいもの──大人力コラムニストの石原壮一郎氏が満身を込めてお勧めするのが「ひざの裏」だ。
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たとえば「ゴーヤ」という食べ物は、子どものころはその存在さえ知らなかった人が多いのではないでしょうか。しかし今は、夏に欠かせない食材になっています。あのほろ苦い野菜の魅力を知ったことで、私たちの人生はより豊かになったと言えるでしょう。
そう、魅力を感じる対象が広がれば広がるほど、私たちの人生はより豊かになり、より幸せになれます。女性に向ける視線や関心も同じ。胸やお尻は確かに魅力的かもしれません。しかし、メジャーなパーツに心躍らせてそれなりに満足し、新たな可能性を切り開こうとしないのは、大人の男としていささか怠惰な姿勢です。
季節は夏。足を出して街を歩く女性が増えるこの時期に、私たちがしっかり着目したいのは「ひかがみ」です。漢字で書くと「膕」。ひざの裏のくぼんだ部分のことで「膝窩(しっか)」とも言います。その部分を深く愛し、強くこだわるマニアも少なくありません。
人も女性の体のパーツも、名前を知ることは深い理解への第一歩。あなたが「ひかがみ」という雅な響きの名前を知らず、単に「ひざの裏」としか思っていなかったとしたら、上りのエスカレータで女性のひかがみが目の前にあったとしても、その美しさを鑑賞しようという発想はなく、視線をすぐに足首やお尻に移していたでしょう。
しかし「ひかがみ」という名詞を知った今日から、あなたの人生は変わりました。上りエスカレータでひざから下を出した女性が目の前に立ったら、じっくりとひかがみを鑑賞したくなるはず。たくさんのひかがみを凝視するうちに、くぼみ方や肉の付き方、太ももやふくらはぎとのコントラストなど、個性の違いに気づくことができるでしょう。
まっすぐ立った状態では、ひかがみは両側がくぼんでいます。中央のふくらみを形成しているのは、ひざの関節の後部でXの形に交差して、大腿骨と脛骨をつないでいる「前十字靭帯」と「後十字靭帯」。ひかがみを見つめながら「ああ、手前で斜めにふくらみを作っているのが『後十字靭帯』で、その奥が『前十字靭帯』か。これからも力を合わせて、彼女の歩みを助けてくれたまえ」と勝手に励ますのも一興です。