50代前半のAさんは、スマホとガラケーの2台持ち。スマホを持つようになったのは3年前からだ。
スマホでゲームなどをしないAさんは、外出先でニュースや天気予報、調べものの検索程度ができればよく、オフィスや自宅ではパソコンがあるので、スマホはあれば便利程度にしか考えていなかった。スマホを持つことに一番、及び腰だったのは、ガラケーに比べて月額料金が大きく膨らむことだった。
その風向きが変わったのは2013年11月のこと。SIMフリー端末という、NTTドコモなどのキャリアと契約しないでもいい端末が登場し始めたからだ。Aさんが購入したのは、グーグルの「Nexus5」(製造はLG)。当時、税込みで3万9800円。iPhoneのSIMフリー版の半額以下で、スペックとの見合いで言えば、当時は破格の値段だった。
端末を購入後、Aさんは、今度はキャリアに代わるところと契約しなければいけない。通話やメールはいまでもガラケーで済ませているので、データ通信専用SIMでOKだ。そこでAさんはIIJのSIM(税抜き3000円)を購入して契約。
このSIMは、いまでは月に3GBまで高速通信(LTE、もしくは4Gと呼ばれる)で使える。月額料金は税込みで1100円程度だ。ガラケーは月額で1700円程度、しかも無料通話分がついて家族間通話は無料。なので、ガラケーとスマホを足しても月に2800円程度で済んでしまう。最初に端末代というイニシャルコストはかかったが、月々のランニングコストは一般のスマホユーザーと比べると劇的に違う。
Aさんがこうした格安スマホの世界に入って3年弱、当時は150万回線にも満たなかった格安スマホの契約回線数は、2016年3月末時点で前年同期比65%も増え、600万回線に近づいてきた(MM総研調べ)。2018年3月末には倍増の1200万回線弱まで増える見通しだ。
格安スマホを手掛ける、MVNO(仮想移動体通信事業者。要は回線貸し出し料などをNTTドコモなどキャリアに支払って回線を借り受ける事業者)は前述のIIJのほか、NTTコミュニケーションズ、楽天、ビッグローブ、ケイ・オプティコム、DMM、イオンなどなど劇的に増えた。
SIMフリー端末も、下は1万円台から上は7万円程度のものまでいろいろだが、売れ筋の3万円前後のものを中心に、いまでは家電量販店のスマホ売り場でキャリアのコーナーと同等のスペースが割かれている。
総務省が従来の「ゼロ円スマホ禁止」などを打ち出したこともあり、キャリアのスマホビジネスは先細りが確実で、右肩上がりの格安スマホ市場と反比例して、キャリアの加入者はジワジワ減り始めている。今後は、そのトレンドがさらに加速していくものと思われる。
前述のAさんは現在、何の不満もないが、強いていえばガラケーとスマホの2台持ちになっている点がやや煩雑だ。さりとて、前述したようにガラケーとスマホの組み合わせは、ランニングコスト的には最強レベルである。だが、今後はキャリア契約のガラケーと、格安スマホの契約はそれぞれそのままに、端末が1台で済んでしまうようになっていく。
価格比較サイトで有名な価格.comでスマホの項目を見ると、人気ランキング1位になっている(8月15日現在)端末は、「Moto G4 Plus」という、あまり聞きなれない商品だ。製造はモトローラだが、スペックが際立ってハイエンドでもなく、ましてや激安というわけでもない。メモリーのRAMが3GB、記憶容量のROMが32GBで税込み3万9000円弱というのは、ごくごく普通と言っていいだろう。
では、何ゆえにこの端末が注目されて人気化しているのか。その答えが、前述したガラケーとスマホの2台持ちから1台への片寄せにある。