東京を走る法人タクシーの初乗り運賃を、現行の730円から410円に値下げする計画が持ち上がっていることに伴い、実現に向けた実証実験が国土交通省主導の下、都内4か所で行われている。
JR新橋駅東口前(9月15日まで)、東武浅草駅前(8月18日まで)、JR新宿駅東口前(8月19日~9月1日まで)、東大医学部付属病院(9月2日~9月15日まで)には、410円タクシーの専用乗り場が設けられ、日本交通をはじめ9グループ23社が40台のタクシーで実証実験に参加。ビジネスマンや高齢者、外国人などの利用頻度や反応について、アンケート用紙を配りながら調べている。
この運賃改定は一般的にはタクシー料金の「値下げ」と捉えられているが、むしろ実質的な「値上げ」といっても過言ではないことは、当サイトでも以前に指摘した通りだ。改めて詳しく説明しよう。
新運賃プランは初乗り距離を現行の2kmから約1km(1.059km)に縮め、運賃は730円から410円へ。そして、初乗り距離後、280mごとに90円加算されていた仕組みも見直し、237mごとに80円加算する設定となっている。
「確かにこの運賃体系に則ると、およそ1.7kmまでの“ちょい乗り”は現行の730円タクシーより安くなる計算ですが、それを超えると今より高くなる場合があります。
そして、5kmまでは現行運賃プラス50円、6kmまでプラス90円、7kmまでプラス140円、10kmまでプラス190円、20kmまでプラス310円……と、もっともニーズの高い中距離乗車は約3%値上がりすることになります」(経済誌記者)
事実、東京ハイヤー・タクシー協会は〈値下げではなく、運賃の組み換えになる〉と説明。国交省が配っているチラシにも、〈目的地までの距離(約2km以上)によっては、現行の初乗り730円のタクシーのほうが安くなる場合もあります。あらかじめご了承ください〉とはっきり書かれている。
いわば金額の“まやかし”は、同じ経路でよくタクシーを利用する乗客なら、すぐに気づいてしまう。浅草駅─上野駅間で410円実証タクシーに乗ってみたという乗客が話す。
「730円タクシーに乗ると、いつもワンメーターでは上野まで行けず、820円か910円はかかっていました。410円タクシーなら、せめてこれまでの初乗り料金ぐらいで着くかなと期待したのですが、結局変わらず。あまり安さは感じませんでした」(40代男性)