終戦記念日の8月15日、天皇皇后両陛下は日本武道館(東京・千代田区)で行われた『全国戦没者追悼式』に臨席された。およそ7000人の参列者の前で、陛下は戦禍が繰り返されないことを願われ、戦没者の御霊に祈りを捧げられた。
「昨年、段取りにお間違いがあった行事ですから、陛下はいつも以上に緊張されているようでした。ご退席の直前、客席から“両陛下、万歳”と声が響くと、両陛下は少し驚かれたご様子ながら、ゆっくりと頭を下げられていました」(皇室記者)
追悼式の7日前、8月8日に陛下は異例のビデオメッセージで「お気持ち」を表明された。
「文案はご自身でお考えになり、最終稿は内閣官房などとも相談の上で練りあがったものです。収録は前日7日の夕方に行われ、撮り直しはなく一度で終えられました。美智子さまは撮影のお部屋まで陛下にお供されました。その後一旦お部屋を離れられる予定でしたが、陛下から“重要なことなので、この場に”というお言葉があり、収録のご様子をお側でご覧になったということです」(宮内庁関係者)
メッセージには生前退位への陛下の強いお気持ちが滲み、皇室の未来への憂いが感じられた。憲法の規定に相反するという指摘もある中で、それでも固い決意とともに国民に語りかけられた陛下のお姿に、「いつもの穏やかでお優しいイメージとは異なっていた」という声も少なくなかった。
すべての公務をしっかりと果たされたいという「完璧主義者」、直前まで生中継のご希望をお持ちだったという「こだわりの強さ」――異例のお言葉発表は、陛下の素顔を垣間見ることのできる機会でもあった。関係者は、「“本当の陛下のお姿”と“国民のイメージ”との間にはもしかしたらギャップがあるかもしれない」と明かす。
身近で陛下と接してきた関係者から話を聞くと、陛下の「知られざる素顔」が浮かび上がってくる。今年1月、陛下は運転免許証を更新されたが、お若い日からドライブは陛下の趣味のひとつだった。
「幼い頃の皇太子さまや美智子さまを助手席に乗せられて、御所や皇居の中をドライブすることも多くありました。陛下は、曲がり角では必ずウインカーを灯され、目視での周囲の確認を欠かさないのです。敷地内ですから他に走っている車はいませんし、歩行者も時折見回りの警備や職員がいる程度。それでも陛下はルールを守られるんです。“生真面目”を通り越して、“頑な”なご性格が拝察されました」(前出・宮内庁関係者)
繊細な印象が強い中で、時には「豪気」なお姿を見せられることもあるという。ご静養の折、両陛下のご到着の夜に、御用邸では職員同士の慰労の宴席が開かれるという。
「その場に両陛下はお顔を出され、職員に労いのお言葉をかけられるんです。ある時には、宴席にいらっしゃった陛下の腕に、日本酒の一升瓶が抱えられていたこともありました。陛下の豪快な労いには職員から思わず歓声が上がったそうです」(別の宮内庁関係者)
常に微笑みを絶やされない陛下が、時に「勝負師」の顔に変わられることもある。