女性の罹患率トップで小林麻央(34才)、北斗晶(49才)など、有名人の罹患も目立つ乳がん。「手術せず放置すべき」との声もあるが、昭和大学乳腺外科学教室准教授の明石定子さんは、「原則、切るべき」と指摘する。
「乳がんの大部分はステージ2までの早期で見つかり、治療すれば10年後の生存率は9割に達します。乳がんを放置しておくと、骨や肺などに転移したり、皮膚の表面からがんが顔を出す“花咲きがん”になり、出血や細菌で悪臭を放つことがあります。
どうしても手術が嫌な場合、ラジオ波で焼く、凍結するなど、手術以外の治療もないわけではありませんが、臨床試験の段階です。また、取りきれたかどうかの確認が顕微鏡でできないので、切除が原則です」(明石さん)
乳がんの手術では、リンパ節転移があれば、原則リンパ節を除去する。この夏、『週刊現代』が行った複数の医療特集では、「手術は受けてはいけない」と多くの手術を真っ向から否定し話題となったが、この処置についても、10人に3人は腕がパンパンに腫れる「リンパ浮腫」になると警告していた。
これに対して、明石さんはこう反論する。
「乳がんの手術を受ける患者さんの6割以上のかたは、センチネルリンパ節生検という方法でリンパ節の一部のみを除去します。この方法では、リンパ浮腫の可能性は1%以下になります。万が一、患者がリンパ浮腫になってもマッサージなどで対処できます。確率の低いリンパ浮腫を恐れて、より深刻な結果を招く乳がんを放置する理由はありません」(明石さん)
子宮がん(子宮頚がんや子宮体がん)、卵巣がんなど、ほかの婦人科のがんも適切に処置すべきだと主張するのは、医誠会病院レディスセンターのセンター長・金岡靖さんだ。
「婦人科のがんの場合、薬物治療だけで治るのは絨毛がんなど限られるので、原則は手術です。『週刊現代』は、“卵巣がんの手術を受けさせてはいけない”としていましたが、他に適切な治療法もないのに手術をするなといってよいのでしょうか。婦人科のがんに対する腹腔鏡手術は普及しつつありますが、まだ歴史が浅く、実績のある施設や医師に依頼するのが適切です」(金岡さん)
40代以上の実に4人に1人が罹患するという子宮筋腫は良性の腫瘍であり、早期の乳がん同様、「すぐ手術せず様子を見るべき」との意見もあるが、金岡さんはこう解説する。
「時間をかけて様子を見た結果、症状がひどくなり手術を余儀なくされるケースもある。また、子宮粘膜の直下に筋腫ができると薬物治療が効きにくく、手術するしかありません。しかも、筋腫が無数にあれば取り切るのは難しく、子宮全摘出が必要となることもあります。