夏休みが終わり、9月に入ると繁忙期を迎えるのがマンション販売。企業の決算期や人事異動、転勤などで住み替えが進むからだという。折しも住宅ローンは史上空前の低金利を更新し、マイホーム購入を検討している人にとっては“追い風”が吹いているかに見える。
しかし、「買わないで賃貸に引っ越す選択肢もしっかりと比較検討すべき」と話すのは、建築検査のプロで総合検査株式会社代表取締役の船津欣弘氏だ。その根拠とは──。
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横浜のマンション問題を契機に『新築マンションは9割が欠陥』(幻冬舎新書)という、少し刺激的なタイトルの著作を出版させていただきましたが、〈第二章、新築信仰が貴方を不幸にする〉の中で新築マンション購入と賃貸の場合のコスト比較をしています。
新築マンションを購入し、万が一、大きな欠陥や施工不備があった場合のリスクは、かなり大きな問題です。現実問題として、出版後、全国各地のマンション管理組合の方からお問い合わせを頂きました。
つい先日(8月17日)、明らかに施工瑕疵があり、デベロッパー・ゼネコンと10年以上も争っている案件の管理組合の方々のお話をお伺いしましたが、大きく報道されることはないものの、潜在的に問題となっている事実を改めて認識しました。
大きな欠陥や施工不備が「ない」と仮定したとしても、やはり一般の方々の大きな関心は「購入か賃貸か」という、ある意味根源的なところにあるとの編集担当者さんからのリクエストにより著した第二章でしたが、ここでは、「購入か賃貸か」の部分をクローズアップします。
まず「購入」の場合ですが、購入時に必要なコスト(イニシャルコスト)は物件価格以外に、不動産取得税や登記費用などの租税公課や修繕積立基金などの「諸費用」が必要になってきますが、目安はおおよそ物件価格の4%程度と言われています。
そして入居後必要なコスト(ランニングコスト)は月々のローン以外に、管理費・修繕積立金など毎月支払いが必要な費用と、固定資産税や火災保険など年払いの費用があります。
対して「賃貸」の場合は、「敷金」と呼ばれる保証金のようなものと「礼金」とよばれる家主に対して支払うお金、そして仲介業者に支払う手数料や火災保険などがあります。関西方面では敷金の代わりに「保証金」とされる場合が多いようです。敷金制は退去の際の修繕費用を差し引き返還、保証金制は最初から敷引きとして○万円差し引くと決められていることがほとんどです。
首都圏の分譲マンション販売価格は一例として2016年7月調べで1戸あたり5656万円、平米単価は80.6万円という調査結果(株式会社不動産経済研究所調べ、同社公開資料及び平成28年8月17日付日本経済新聞記事より)がでています。
一般的なファミリータイプである3LDKの場合、約75平米として計算すると6045万円になります。この価格はバブルの頃以上ともいわれていますし、一般のサラリーマンには到底手が出せる金額ではありません。