AI(人口知能)により、われわれの経済、社会のあり方は大きく変質しようとしている。経営コンサルタントの大前研一氏が、AIを取り巻く問題について考察する。
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AI(人工知能)の発達により、これまで人間がやってきた仕事がどんどんコンピューターに奪われると言われている。チェスや将棋に続いて囲碁までもがAIに敵わなくなり、AIによる自動運転や工作機械・ロボットのFAなど様々な分野でディープラーニング(深層学習)技術の開発が進んでいるが、ディープラーニングのような高度なことをしなくても、コンピューターに置き換わる仕事はたくさんある。
その中でも最優先で“自動化”に取り組むべきなのは「行政」の仕事である。実は、日本全国の役所で行なわれている行政業務の大半は、AIとビッグデータを組み合わせれば、代替可能だ。極端に言うと、法律を作る人は必要だが、役人は不要になる。
つまり、役人は基本的に法律にのっとって仕事をしているのだから、法律がクリアであれば役人の仕事はプログラミングできるので、各種の許認可などは「YES」か「NO」か、瞬時にわかるはずなのだ。となると、都道府県や市区町村の役所の窓口にいる人はもとより、税務署の職員も要らなくなる。役所の効率が飛躍的に高まり、窓口が開いている曜日や時間も関係なく、ネットで24時間どこからでもアクセスして利用できるようになる。
自動運転ならぬ“自動行政”は、すでに海外で実証されている。好例が本連載(第458回・459回)で紹介したエストニアの「eガバメント(電子政府)」だ。人口約131万人の小国だが、世界で最も進んだ国民DB(データベース)を構築し、国民はICチップの入ったIDカード(身分証明書)を所持することで、国民DBからすべての行政サービスを受けることができる。