故きを温ねて新しきを知る。内閣改造や新都知事、そして天皇の生前退位といった最新ニュースの深層は、戦後政治史の経験と蓄積がなければ読み解けない。そこで、本誌恒例の老人党座談会を緊急招集した。村上正邦氏(84)、平野貞夫氏(80)、筆坂秀世氏(68)の3氏が存分に語り合った。ここでは8月8日に天皇陛下が語られた11分間にわたる「お気持ち」についてだ。
村上:五輪なんかよりさ、天皇陛下のご発言についてどう考えるかが重要でしょう。私ももう84歳で、平野先生も筆坂先生もそうだけど、80歳超すといつお迎えが来るかわからんですよ。そのお気持ちはよくわかる。
筆坂:私はまだ80じゃないですよ。
村上:陛下は82歳なんだよ。おそらくいつも、「自分がいなくなったらどうなるんだろう」、「美智子さまは、皇太子殿下は、秋篠宮殿下はどうなるんだろう」、そして「この日本国はどうなるんだろう」という心配ばかりしておられるはずです。
筆坂:今上陛下は、新憲法下で初めて天皇になられた方で、いわば象徴天皇の在り方をご自分でつくり上げてこられた。だから、象徴天皇の在り方をどう引き継いでいくかを考えておられると思う。
それに昭和天皇崩御のときには、下血がどうとか過剰報道が続き、崩御後には1年くらい儀式が続いたでしょう。皇位を譲って天皇でなくなれば、簡素化できるとお考えなのではないか。
村上:やっぱり、日本国の行く末に不安を覚えておられるんだと私は思う。安倍さんは憲法改正のことばかり言うが、皇室典範の改正が先ではないかと。
生前退位、本来は譲位と言うべきなんだが、その生前退位を認めるのか、摂政を置くのか、女性天皇を認めるのか、そういったことを国民にも安倍政権にも問いかけておられるのだと思う。