六代目山口組と神戸山口組分裂から早1年、その抗争は、一時にくらべ沈静化しつつあるように見える。だが実際にはいまも血は流れ続けている。ただ、血の臭いが巧妙にかき消されているだけなのかもしれない。
宮崎県警に「10人くらいで喧嘩をしている」という110番通報があったのは、8月19日金曜日の午前0時50分頃だった。警察官はただちにJR宮崎駅から2km、大淀川河口付近にある田代町の路上に向かった。
現場では男性が血を流して倒れており、その友人4人が立ち尽くしていた。応援のパトカーや救急車が到着する頃には、騒ぎを遠巻きに見物する野次馬も集まっていた。
「繁華街からは遠いし、夜になれば車しか通らないような場所。人が集まるなんて珍しい。大声で怒鳴りあっていたので、何事かと思ったけど、近寄れる雰囲気じゃなかった」(近隣の住民)
病院に運ばれた男性は、腹部などを刺されており、約6時間後に出血性ショックで死亡した。男性は付近の民家に助けを求めていたというので聞き込みをしたが、該当すると思われる住民は取材拒否だった。
当初、マスコミは被害者を住所不定の本田真一氏(43)と報道した。宮崎県警がそう発表したからだ。
「事件の詳細から、どうも一般人ではないらしいという予想はあったが、警察はそう言わない。記者のひとりが暴力団幹部とパイプを持っており、そこから裏取りして、ようやく『元暴力団構成員』ということが分かった」(全国紙記者)
事実、死亡した本田氏は宮崎市内の有力団体である井根組(六代目山口組石井一家)の元幹部だった。
「10年以上前までは地元では武闘派として知られていた」(九州に本部を置く他団体幹部)