国産ハーブ鳥を使用。味付けは企業秘密だが、「骨付きゆえに骨から水分が抜けるまで時間を掛けて揚げている」という秘訣は教えてくれた。「とり福」では「宝雲亭」の餃子も注文できる。まさに全方位的な魅力を持った店となったわけだ。かつてのファンの中には、あのからあげが「とり福」で食べられると知る人はそう多くはないらしい。もったいない。すぐ行くべし。
思えばからあげほど日本人に愛されている食べ物はないのではないか。北海道ではザンギと呼ばれるし、全国各地で様々に愛されている。筆者にも特別に思い入れのあるからあげがいくつかある。もちろん長崎のこの味。そして千葉県柏市の焼き鳥屋「太平楽」のからあげ。大き目にカットされているが、胸肉ですらふっくら柔らかい。ジャンクな味わいのパウダー状の調味料が一緒に供され、それもまた良い。
東京・自由が丘の「とよ田」はからあげの概念が変わる名店である。砂肝、もも、手羽の3種類のからあげを順番に出してもらうのだが、じっくり素揚げにされるため時間が掛かる。その間にビールがすすんでしまい、美味しいからあげを前に酩酊してしまうこともしばしば。これらを個人的に「日本三大からあげ」と呼称しているが、「とり福」の登場によりバラバラだったパズルのピースがまたパチリと組み合わさったわけだ。
夏の暑さを乗り切るならからあげだ。ご飯のおかずに良し、ビールのアテに良し。これほど日本の夏に魅力を放つ食べ物はないだろう。
撮影■松隈直樹 取材/文■梶原由景
※週刊ポスト2016年9月9日号