医者が患者に告げる余命の数字は、その人の残りの寿命を指すわけではない。ある病気の「生存期間中央値」なるものを告げるケースが大半である。そして、この値が意味するところは「その病気で亡くなる人が100人いた場合の50人目の人の亡くなった時点」だ。
それにもかかわらず「余命」や「生存率」といった、時に患者を不安にさせるだけの数字をなぜ医者は言うのだろうか。おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎氏が指摘する。
「余命や生存率が、勘違いされやすいことを知ったうえで告げたがる医師が存在するのは事実です。患者や家族に問われたから、患者に病状を理解してもらうためといった理由が大半ですが、彼らは患者がどう受け止めるかをそこまで重く考えていないのです」
米山医院院長の米山公啓氏は医者の本音を明かす。
「余命を宣告する時、“控えめ”“厳しめ”に言うのが医者の世界では暗黙のルールになっています。例えば、余命半年と宣告した患者が1年生きれば、患者も家族も医師に感謝してくれます。でも“余命1年”と告げた患者が3か月で亡くなれば、下手をすると遺族から訴えられかねません。
だから、サバを読んで少なめに言う。余命半年と宣告された患者が2年、3年と生きることはザラです」