松嶋菜々子が主演のドラマ『営業部長 吉良奈津子』(フジテレビ系)の視聴率が低迷している。初回は10.2%でスタートしたものの第2話で7.7%に急落。その後も下がり続け、8月18日放送の第5話はついに5.2%に。翌週、6%台に持ち直したものの、9月1日には再び下落して5.9%に。かつて「視聴率の女王」と呼ばれた松嶋のドラマはなぜ視聴者の支持を失っているのか? テレビ解説者の木村隆志さんがずばり指摘する。
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松嶋さんの役どころは、育児休暇を経て3年ぶりに現場復帰する42歳の吉良奈津子。3年ぶりの連ドラ主演であり、実生活で子育てに励む42歳の松嶋さんにとってリアルな設定と言えます。
しかし、それは視聴者にとって関係のない話であり、共感できるものではありませんでした。クリエイティブを追われて営業に回されたことも、「3年も休んだら当然でしょ」「部長を任されるなんて十分凄い」と、苦労しているように見えないのです。
“仕事と家庭の両立”というメインテーマ以外にも、上司のハラスメント、嫁姑問題、夫の浮気、ベビーシッターの暗躍などトピックスが混在しているのも、視聴者にとっては「どれに焦点を当てて見ればいいのか?」とややこしいところ。職場の男性vs女性、上司vs部下。プライベートの嫁vs姑、正妻vs愛人など、登場人物の対立図式も乱立していて、「結局、何を描きたいドラマなのか?」、戸惑っている視聴者が多いようです。
松嶋さんは以前と変わらず主演女優としての華を感じますが、それは裏を返せば、かつての「キレイでカッコイイ松嶋さん」から変わっていないということ。吉良奈津子というキャラクターの大枠は、『救命病棟24時』『やまとなでしこ』『美女か野獣』(すべてフジテレビ系)で築いた松嶋さんのイメージそのものでした。
これは松嶋さんの演技うんぬんではなく、制作サイドの問題。42歳は外見でわかる美ではなく、内面からにじみ出る美も伝えられる年齢なのですが、今のところそれを感じさせるシーンがありません。制作サイドの頭にある「松嶋さんのヒロイン像はこうあるべき」という美意識が何年も前から変わっていない気がするのです。