「尖閣諸島周辺での中国の一方的な行動は認められない」──岸田文雄外相の抗議に、のらりくらりと「東シナ海の情勢悪化を防ぎ、不測の事態を回避することが重要だ」と返した王毅外相。
「情勢悪化を防ぐ」どころか、日中韓の外相会談が開かれた8月24日の前日にも、尖閣諸島・久場島沖の接続水域(領海の外側約22km)を、中国海警局の公船4隻が悠然と航行していた。
さらにその2日前にも、やはり延べ4隻の公船が領海に侵入している。
調整が難航し、ようやくセットされた外相会談の直前に領海・接続水域への侵入を繰り返すとは傍若無人もいいところだが、見方を変えればそれだけ「尖閣は中国領」という主張が特別な機会を狙ったアピールではなく、“日常化”しているということである。
放置すれば、日本の領土を奪われかねない非常に危うい事態だ。
8月初旬に中国公船20隻以上、漁船400隻以上が尖閣周辺に押し寄せたことは大きな話題となったが、その後はオリンピック関連のニュースばかりが報じられ、尖閣周辺海域での緊迫した情報はほとんど伝えられなくなってしまった。
海上保安庁の資料などをもとに、騒ぎとなった8月初旬から日中韓外相会談までの動きを検証しよう。
●8月7日 中国公船11隻と漁船15隻が相次いで領海侵入
●8月8日 中国公船4隻と漁船24隻が相次いで領海侵入
●8月9日 中国公船10隻と漁船25隻が相次いで領海侵入
●8月10~16日 接続水域で公船複数が航行・停泊を繰り返す
●8月17日 公船4隻が相次いで領海侵入
●8月19~20日 接続水域で公船3隻が航行
●8月21日 公船4隻が相次いで領海侵入
●8月23日 接続水域で公船4隻が航行
テレビや新聞はこの事態を忘れてしまったようだが、切迫した状況が続いていることは明らかだ。1年前は、領海や接続水域に侵入する公船は一度に2~3隻だったが、ここに来て「4隻」ローテーションになっている。中国側の「尖閣を奪う」という明確な意思が伝わってくる。