韓国では、日本の天皇は“護憲派”で改憲を進める安倍首相と対立しているとの説が広く流布されている。終戦記念日の行事についても韓国マスコミは「日王、今年も“戦争に深い反省”/アベは4年間、謝罪にそっぽ」(朝鮮日報8月16日付、1面記事)などと天皇・安倍対立論をしきりにあおっていた。
先に生前退位を訴えられた陛下の映像メッセージ(8月8日)についても「アベの改憲に影響か」(ハンギョレ新聞)「アベの軍国主義改憲にブレーキかかるか」(東亜日報)など、左右を問わず同じような反応だった。
そんな調子だから中には「アキヒト早期退任が東北アジアに与える影響を注視する」(中央日報・社説)などというトンデモ風の拡大解釈まで登場する。つまり陛下の生前退位は安倍政権の改憲論に対する批判、警告だから、結果的にこの地域の国際情勢に影響を与える──という話になっているのだ。
天皇・安倍対立論の背景はひとえに“アベ憎し”である。韓国マスコミはこの4年間、「強い日本」を目指す安倍政権の足を引っ張り、安倍引き倒しに血眼できたが、ここにきてその絶好のカードとして天皇利用を思いついたのだ。
しかしこれには日本の進歩派の間でよく出る天皇平和主義者論や天皇護憲派論が大いに影響している。その日本の進歩派の代表が朝日新聞と見られているため、ついには「天皇は朝日新聞の愛読者」説まで登場するにいたった(7月25日付、東亜日報・東京特派員コラム)。旧憲法下で政治にかかわった天皇をもっとも非難、批判してきた日本の進歩派と韓国マスコミが今、一緒になって「安倍政権打倒」で天皇をしきりに政治利用しようとしているのだ。