プロ野球界には、常識を覆すようなフォームで活躍する選手が定期的に現われる。それらは奇をてらったものではなく、プロの世界を生き抜くために試行錯誤し、辿り着いたものである。1995年から2002年まで広島で活躍した山内泰幸の投げ方は「UFO投法」と呼ばれた。通算成績45勝44敗1S、防御率4.40の山内氏が語る。
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ピンク・レディーの名曲『UFO』の振り付けに似ていることから、『UFO投法』と名付けられたのはプロデビュー直後ですが、あのフォームになったのは大学(日本体育大学)時代。
それまではもう少し右肘の位置が低くて、トルネード投法のように上体を捻っていました。ちょうど野茂英雄さんがプロデビューした頃でしたが、野茂さんの真似をしたのではなく、投げやすい形だったんです。
ところが大学入学後、監督から「捻らなくても力が出せる」と言われてフォーム改善に着手。打者のタイミングを外せるようなフォームを探していたところ、UFO投法に行き着いたのです。
左足を上げて投球モーションに入る時、球速を上げるために右肘を肩の高さまで上げてから投げていたのですが、右手だけを上げたら握りが打者に丸見えになる。そこで左手のグローブで隠しながら上げ、打者のタイミングを外すためにそこで一時停止。「UFO」のタイミングですね(笑)。
足を上げた後は普通の投げ方と同じ。大学時代に同級生から「変わっている」と言われるまで、自分が他人と違うとは思っていなかった。周囲からは肘に負担がかかると心配されましたが、このフォームで結果が出ました。大学通算31勝を挙げ、48回3分の2イニング連続無失点記録(その後、菅野智之が東海大学時代に更新)もマーク。このフォームでなければ並以下の投手だったと思います。