4月の改編時、「無難な情報番組のみをリレーさせる15時間生放送はフジテレビらしくないな」と感じていましたが、このところ夜のバラエティー番組でも『クイズやさしいね』『そこホメ!?』のような超ソフト路線が目立ち、「『何が飛び出すか分からない』楽しさはもう捨てたのかな……」と残念に思っていました。
しかし、31年続いた『ごきげんよう』と52年間続いた昼ドラマを終了させてまでこだわった15時間生放送を半年間で撤回した決断には、重いものがあります。フジテレビは、4月期の全日帯(6~24時)視聴率で、TBSに抜かれて民放4位に転落しました。しかし、これが恥や外聞を気にせず、視聴率だけを見るわけでもなく、かつての“視聴者ファースト”を取り戻すきっかけになるかもしれません。
そもそも「15時間生放送」は日本テレビが先輩であり、テレビ朝日とTBSも再放送のドラマか料理番組を挟んでいるだけで、生放送の情報番組は増える一方。日中にテレビを見ている人々は、この「朝から夕方まで同じニュースばかり。飽きても他に見る番組がない」状況に辟易しはじめていました。今回の改編は、そんな現状に小さな風穴を開ける可能性を秘めているのです。
ちなみに10月からのテーマは、「フジテレbe with you.」(「そばにいるよ」の意味)。今や絶滅危惧種となった純バラエティー番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』『めちゃ×2イケてるッ!』を打ち切らなかった好判断も含めて、「今回の小さな変化が、のちのV字回復につながるかもしれない」と密かに期待しています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。