昭和の終わりと現在、2つの時代の象徴的な出来事を並べてみると、今まさに大きな時代の節目を迎えているような気がしてならない。社会的な事件、犯罪事件などを掘り起こすと、昭和最後の年となった1989年(昭和64年)と今年(平成28年)にはやはり類似点が浮かび上がる。
1989年には、宮崎勤の連続幼女誘拐殺人事件が起きたが、今年は植松聖の障害者施設殺傷事件が起き、世間を震撼させた。
「性質の異なる事件ですが、こうした事件というのは時代をよく表わすものです。凶悪事件は戦後ずっと減り続けているのですが、これらのような突出した事件は起きてしまう。宮崎事件ではオタクバッシングが起き、相模原事件では犯人の思想に注目が集まった」(コラムニストの中森明夫氏)
また、スマホゲーム『ポケモンGO』の流行が社会現象となっているが、1989年には携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」が任天堂から発売され、やはり社会現象となる大ブームを起こした。
さらに今年は映画『シン・ゴジラ』が話題になっているが、ゴジラというのはまさに昭和を代表する怪獣だった。1989年の公開から一時充電期間に入り、その後も平成ゴジラ人気は低迷したままだったが、庵野秀明監督は怖いゴジラを現代のテクノロジーで復活させ、大ヒットとなっている。カルチャー批評誌プラネッツの副編集長の中川大地氏はこう分析する。
「ゴジラの誕生はまだ敗戦の記憶が残る1954年。当時はビキニ環礁で第五福竜丸事件があり、核実験の影響で生み出された怪獣とされた。いわば“昭和の怨念”を背負ったキャラクターだった。だから、平成が進むにつれてゴジラの同時代的な意義は失われていったわけですが、5年前の東日本大震災の記憶がようやく虚構表現のなかに熟成され、復活した。
『シン・ゴジラ』では、日本はこれまで戦災や天災で何度も大変な目に遭ってきたが、何度でも立ち上がる、死と再生のリズムが日本の特徴だと主人公が語っていて、深い日本文明論になっています」