白いつば広帽を目深に被った女性がひとり、深夜の大阪・キタのメインストリートを歩いていた。繁華街のネオンと車のヘッドライトに照らされた顔は少し上気している。彼女はついさっきまで舞台の上にいた。クライマックスでは一糸まとわぬ姿を披露し、万雷の拍手を浴びた。頬の赤みは、その余韻だろうか。
その5mほど後ろに、彼女の背中を見つめながら歩く長身の男性がいる。シルバーのベストにパンツ。ふたりは近づかず離れず、歩いていた。
交差点の赤信号で女性が止まった。すると、彼が自然に追いついて、彼女の横に立つ。彼が何かを彼女の耳に囁く。先を歩いた高岡早紀(43才)と、後を追った松坂桃李(27才)。2、3言葉を交わすと、笑顔に。阿吽の呼吸で別々のタクシーに乗り込み、周囲の目を気にしながら夜の街へと消えていった──。
8月26日に東京公演が始まった高岡と松坂が出演する舞台『娼年』は、9月7日から会場を大阪に移した。
原作は石田衣良(56才)の小説『娼年』と続編に当たる『逝年』。毎日を無気力に生きてきたフリーターのリョウ(松坂)は、ボーイズクラブのオーナー・御堂静香(高岡)と出会い、自分の体を売るプロの娼夫としてさまざまな女性たちの心を「セックスを介して」解放していく。愛のない肉体の交わりを繰り返すリョウだったが、次第に静香に惹かれていく。
「3時間の公演で松坂さんは10回もベッドシーンを演じます。卑猥な言葉を言ったり、胸に舌を這わせたり、放尿シーンや男性同士の行為も。あまりに生々しい性描写に、舞台では珍しく15才未満の観劇が禁止されたほどです。それも話題を呼んで、連日満員御礼で立ち見客も出ています」(舞台関係者)
舞台のクライマックス、レクイエムが流れる中、あふれ出した感情を抑えきれずに高岡と松坂は服を脱ぎ捨て一糸まとわぬ姿になる。同時に天蓋からレースのカーテンが下り、カーテン越しに見えるのは、透き通るような柔肌にツンと立った乳首がなまめかしい高岡と、松坂の引き締まった肉体。ふたりは静かに体を重ねた。