「待望の日本人横綱誕生なるか」──と盛り上がるはずだった大相撲9月場所は、綱取りのかかった大関・稀勢の里が出だしからつまずいた。その結果、周囲の奇妙なまでの“お膳立て”ばかりが、浮き彫りになっている。
「(今場所後の横綱昇進は)もうない、ということはないけれど、非常に厳しい」
平幕・隠岐の海を相手に、力なく土俵を割った稀勢の里の相撲を桟敷席で見ていた横綱審議委員会の守屋秀繁・委員長(千葉大名誉教授)はこうバッサリ切り捨てた。綱取り場所の初日に不甲斐ない相撲を見せられた感想としては当然だろう。
ところが、相撲協会はむしろ、稀勢の里の“フォロー”に躍起になっていた。八角理事長(元横綱・北勝海)はわざわざ、横審委員長のコメントを打ち消すかのように、「今場所は序盤に星一つ二つ落としても、チャンスはある場所。気持ちを切り替えて粘り強くいくだけ」と発言してみせた。
春、夏、名古屋と3場所連続で準優勝した稀勢の里については、場所前から18年ぶりの日本人横綱への期待が煽りに煽られてきた。
「協会の顔色をうかがうスポーツ紙は初日で土がついた後も、“綱取り場所初日に黒星を喫して昇進したのは柏戸、栃ノ海、三重ノ海、千代の富士の4人いる”といった記事を出し、“可能性はまだある”と援護射撃に必死でした」(協会関係者)
そうしたなかで3日目に早くも2敗目を喫し、白けたムードばかりが広がった。