鯉が滝登りをするがごとく、一気に頂点へと駆け上った広島カープ。今年は「広島」が何かと注目を集めている。5月にオバマ大統領が訪問。外国人が訪ねたい日本の観光地トップ3のうちの2つを広島県が独占。『広島はすごい』という本も売れている。
それだけでない。「広島」から世界トップクラスを目指す、興味深い挑戦があることをご存じだろうか。「世界トップ100位に入る大学になる」──と宣言したのが、「ローカル」国立大学の広島大学だ。ではその広島大学、いったい今どれくらいの順位にいるのか。
世界で最も影響力があるとされる英国タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)「世界大学ランキング」(2015-2016年度版)を見ると、なんと「501~600位」。その広大が、「10年間でトップ100」を狙うという。勝ち目はあるのか。何か秘策があるのか。もしあるとすれば、それはどんな具体性、実現性を持っているのか?
そもそも、国立の教育機関がそうした生々しいランキング争いに参戦する意味とは、何なのだろうか。『広島大学は世界トップ100に入れるのか』(PHP新書)の著者、山下柚実氏に聞いた。
──地方の国立大学である広島大学がなぜ、世界ランキングトップをめぐる戦いに参加する宣言をしたのでしょうか。
山下:「今後10年で世界大学ランキングトップ100に10校ランクインを目指します」と口火を切ったのは、実は安倍晋三首相でした。2013年5月、「成長戦略第2弾スピーチ」の中で「世界に勝てる大学改革」という方針を掲げ、国は積極的な改革を進めてきました。日本の大学が世界ランキングを意識する風潮もこのあたりからぐんと高まってきたと思います。
すでに2004年に国立大学は法人化され、自ら特徴を活かし強い点を伸ばし、外部資金を稼いで自立することが求められています。そうした流れの中、世界ランキングによる評価によって一層入学志願者を増やし、企業との共同研究を増やして外部資金や補助金を得ようといった、「大学経営」への意識が高まっているわけです。
──しかし、そうした流れとは裏腹に、日本の大学のランキングは思うようには伸びていない、いやむしろ低下傾向にあるとも聞きますが。
山下:THE世界大学ランキングの最新版(2015年9月30日)が発表された際は、大きな話題を集めました。というのも、前年まで「アジア首位」だった東京大学が順位を落とし、トップの座をシンガポール国立大学にもっていかれたからです。中国の大学も上昇傾向にあります。それに対して日本は、東大が前年23位から43位へ、京都大学も前年59位が88位へと下落しました。この2つの大学の他に上位200校以内に日本の大学は見あたらなかった。前年は東京工業大学、大阪大学、東北大学の5校が入っていたのですが。
最新版は毎年9月末頃に発表されるので今年も注目を集めると思いますが、このランキングを見る限りたしかに日本の大学の順位は低下傾向にある、と言えるでしょう。