「県警幹部は“こんなに早く示談するとは思わなかった。ハシゴを外された”と唇を噛んでいた」──そう話す捜査関係者の表情には落胆と疲労の色が滞っていた。
俳優・高畑裕太(23)が群馬・前橋市内のホテルで40代の女性従業員に性的暴行を加えたとして強姦致傷容疑で逮捕されたのは8月23日。以降、留置されている前橋署には連日マスコミが詰めかけた。県警は逮捕発表以降、情報をほとんど明らかにしなかったため、全容が明らかになるのは法廷か──誰もがそう思っていた矢先、事態は急転した。
逮捕から17日後の9月9日、被害者との示談が成立し、不起訴処分となって釈放されたのである。
親告罪の強姦と異なり、強姦致傷は被害者の告訴なしで起訴できる。示談後の起訴もできるが、そうなると被害者の協力なしで裁判を争わなければならない。検察は公判を維持できないと判断し、不起訴としたとみられる。
“逆転劇”はなぜ起こったのか。
逮捕当初、高畑は「女性への欲求を抑えきれなかった」などと容疑を認め、犯行についても、高畑の求めで歯ブラシを部屋に届けに来た女性従業員の手首をつかみ部屋に連れ込んで暴行した、と報じられていた。
「示談後に発表された高畑の弁護士の声明では、“歯ブラシを部屋に届けさせて暴行した事実はないと考えている”と報道を否定しています。高畑の供述に関する報道は、県警の発表によるものですが、当初から彼の供述には曖昧な部分もあった。県警は不確定情報を公表して、騒動に火をつけた可能性がある」(前出・捜査関係者)
もう一つ気になるのが、県警に通報した“知人男性”の存在だ。女性従業員は午前2時から同2時半の間に高畑の部屋にいたとされる。知人男性が通報したのは同3時半頃。女性が部屋を出てからわずか1時間後だ。別の捜査関係者が言う。
「事態を把握してから通報するまでの彼の行動はあまりに迅速だった。通報した時点で詳細まで押さえていて、周到ささえ感じられた。60代後半の彼は、地元では名が通っている人物で、県警もその存在を知っていたはず。もう少し逮捕や発表には慎重になっても良かったのではないか」