党機関紙であり、すべての記事が共産党の意向を反映している「しんぶん赤旗」にも、“社説”欄がある。同欄のタイトルは、ずばり『主張』。その言説を、評論家の古谷経衡氏が分析する。古谷氏は赤旗の文体について“「です・ます」で統一され、重要なオピニオンの部分は「~ではないでしょうか」で締めるのが恒例だが、時折顔を出すこういった単語が珍妙でアンバランスな読後感を与えてくれる”と分析した。
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2016年1月24日の「主張」。長野県軽井沢で起こったスキーバスツアー事故(死者15名)を安倍政権による「規制緩和路線」に絡めて批判するものだ。
規制緩和による自由競争により、安全や人命がおざなりになる、というのは共産党のみならず反安倍界隈や反グローバルを標榜する国家社会主義者からも盛んに聞こえてくる「常套句」である。
赤旗はこの日の「主張」をこう結んでいる。「悲惨な事故を繰り返さないため『規制緩和』を根本から見直すことが必要です」。なにか事故が起こると、資本主義の弊害、自由競争の行き過ぎを嘆く文脈の中に、必ずと言ってよいほど登場するフレーズだ。
事故の被害者の無念と遺族の悲嘆は想像するに余りある。しかし、資本主義が行き過ぎると人命が損なわれる、という古典的な方程式は本当に正しいのか。赤旗は、共産主義体制末期で起こったチェルノブイリ事故の悲劇を忘れたわけではあるまい。
閉鎖的で、外部と競争がなく、国家から庇護されている組織は、必ず堕落する。中国の国営企業が、巨大な腐敗と不採算企業であることが如実にそれを物語っている。ソ連型共産主義は本来の共産主義ではない、と抗弁したところで理屈にはならぬ。